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鋼の錬金術師
石の記憶1


「 マリィ 」

「え?あ、マスタング大佐!」

祈るように戦況を見守っている マリーゴールド の背後から、マスタングは声を掛けた。
しかし、振り向いた彼女と目をあわせる間もなく、戦っているエドワードたちに瞠目する。

「なんだ!?あのゴーレムは?」

「クロウリーさんです」

「クロウリー!?」

隆隆とした黒い体駆、猛獣のような声。人知を越えた姿は、まるでゴーレムの王のようだ。
唯一クロウリーの面影があるとしたら、銀色の髪くらいだ。
その姿に驚愕しながらも、マスタングたちはすぐに冷静さを取り戻す。


「戦況はーー互角でしょうか?」

アームストロングの問いに、マスタングは戦いを分析し口角を僅かに上げる。

「いや、鋼のが押してきている」


2人は、先程と同じく赤い石を集中的に狙っていた。

「アル!身体から切り離すだけじゃダメだ!!壊すんだ!!」

「うん、わかった!!」

エドワードの突起錬成がクロウリーの視界を遮る。その隙に、鎧とは思えないほど素早い動きでアルフォンスがクロウリーの身体を打ち砕く。
動きが止まったところを、鋼剣が赤い石を斬り刻む。


ガアアアアアアーーーッ!!!!


断末魔の叫びを上げ、クロウリーの身体がドロドロと崩れ落ちた。
それを見たエドワードとアルフォンスは、拳を下ろす。



「終わったーー終わったぜ・・じーさん。エルマさんーー」

「・・・・・」

半ば放心したように呟くと、後ろから足音が近づいて来る。

「やったな。鋼の」

「エド!アル!」

「大佐。 マリィ ーー」

エドワードの眼に、マスタングたちと走ってくる マリーゴールド の姿が映った。
その刹那、エドワードの背後で火柱が上がる。

「おわっーー!!」

金髪が焼けるかと思う程の熱風が吹き付けた。

「何すんだよ、大佐!」

抗議するも、マスタングは指を突き出したまま前方を凝視している。
アルフォンスは、マスタングの視線の先を見て叫ぶ。

「兄さん、あれ!?」

「あ、あれはーー!!!」

崩れたクロウリーの身体が、山のように盛り上がっていた。その中に、彼の髪も爪も融けていく。
そのあまりの大きさに、思わず後図去る。

「おわっーー!!」

「どういうことだーー鋼の!?」

苛立ちの混ざる鋭い眼がエドワードを一瞥する。

「ーー復活した!?」

再び高く乾いた音がして、炎が巨大なゴーレムの身体を焼く。だが、直ぐに再生してしまう。
ホークアイの銃が構え、アームストロングも青い軍服を脱ぎ捨てる。

「兄さん!!赤い石だーー!!石を壊さないとーーー!!!」

「何か方法があるなら早くしろっ!!!長くは持たんぞッ!!!」

悲鳴のようなマスタングの声に急かされ、ホールを見渡す。すると、奥に薄く開いた扉が見えた。

「ーー!!あの奥かッ!!!」

「小僧、俺も行くぞ」

「大佐!もう少し時間を稼いでくれッ!!!」

火花を飛ばしたその指で、マスタングは3を示す。

「これで、貸し三つだなーーー行け!!!」

不敵に笑い、促した。頷いて走り出したエドワードに続こうと、 マリーゴールド が一歩踏み出したその時ーー

「 マリィ !」

マスタングの声に、立ち止まり振り向いた。



「君が決めたまえ!君自身のことを!!」


そう告げた漆黒の眼差しに、揺るぎない決意を宿した碧の瞳が頷いた。



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