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鋼の錬金術師
レビスの塔1


息苦しいほどじっとりと湿った空気が、部屋全体に満ちていた。
畝畝と部屋の天井を這うパイプから、ポタリポタリと純化された血液が赤い石に滴り落ちている。
その石を、全身を鱗のような模様で覆われた女は、恍惚とした表情でみつめていた。
部屋へ入って来たジャック・クロウリーは、女の様子に目を細目る。


「ーーーなんだ・・どこに行ったのかと思えば・・・またここに来ていたのか」

「うううううぅぅーーー」

「別に怒ってなどいないよ・・お前は本当にこの部屋が好きだな。いや、好きなのは石の方か」

女は彼に擦り寄ると、クロウリーは女の細い身体に腕を廻した。

「あぁ・・私も、この石は大好きだ」

自分への愛の囁きを聞いたように、女はうっとりした声を上げる。

「見るがいい。赤きエリクシルは、今日はまた一段と美しく輝いている。
人の血を吸えば吸うほど、エリクシルは赤く燃え上がるように輝きを増すーーまさに、命の炎が燃え上がるように」

クロウリーの指が、女の長い髪をそっと鋤く。

「もうすぐだ。もうすぐだぞ・・私もお前も、このエリクシルとて不完全な状態だが、その悪夢ももう終わる。
多くの者たちが、その命を捧げにやって来た。エリクシルを、完成させるために・・」

澱んだクロウリーの瞳が鈍く光る。誰の言葉も届かない、強い強い決意の光。

「私は、お前のためならば、どんなことでもするつもりだーー」






たとえ 悪魔と呼ばれようとーーー

たとえ この身が滅びようとーーー

たとえ この身が朽ちようとーーー






「覚悟は出来ているぞ、アーレン。レビスの王に誓ってーーー」


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