鋼の錬金術師 熱砂の幻影 街は、高い塀で覆われていた。 塀の外からは街並みは見えなかったが、中心に聳え立つ塔だけはよく見えた。 アーレンは、塀に沿って東に向かう。しばらく進むと門が見え、一行はそこからへ中へと入った。 「ここが、古代レビス文明の王都、シャムシッド・・・」 マリーゴールドが、街を見渡して呟いた。 隣りに並んだエドワードは、腕を組んでアーレンを見る。 「じーさん、どこが“大昔に滅んだ街”――だって?」 「そんな、まさか・・・こんなはずが――」 アーレンは、街の様子に驚愕した。 朽ちていた筈の街並みは、綺麗に修復されており、通りには、人が溢れていた。 聞かされていた事とあまりに違う為、ホークアイも疑問を投げかける。 「本当に、この街がシャムシッドなんですか?」 「それは間違いない。あれが、その確かな証拠なんだ」 そう言ってアーレンが指差す先には、塀の外からも見えていた塔があった。 その塔は、レビスの塔と呼ばれている。 「だから俺は――驚いているんだ・・・」 「――ま、じーさんが知らない間に、遺跡に人が集まって、また街が出来た。な〜んてことも、有り得るだろ」 「確かに、街が再興することはあるかもしれん。だが、あの“塔”まで――」 「街のことは不思議ですが、今は、ジャック・クロウリーがこの街にいるのか、調べる方が先決です」 ホークアイの進言に、アーレンはまだ納得出来ない様子だ。 すると、痺れを切らしたエドワードが、ホークアイを一瞥する。 「だな。とりあえず、クロウリーのことを、聞いてみようぜ」 家の壁にもたれて、ぼんやりしている男に近づくと 「ちょっと聞きたいんだけど、この街に、クロウリーって目つきの悪いヤロウが―――って、おい、ちょっと待てよ!」 話しかけるエドワードに、男は黙って立ち去る。 「・・・ほおぉ、この俺さまをシカトするたぁ、いい度胸だ」 ムキになって声をかけまくるが、反応は一緒だった。 それを見ていたアルフォンスが、怒り心頭の兄を止めた。 「ちょっと待って、兄さん。今の、無視したって感じじゃないよ」 「なんだか、言葉が通じてないみたい。レビス語とかあるんでしょうか?」 問い掛けるマリーゴールドに、ホークアイはアーレンに助言を求める。 「アーレンさん、通訳を――」 お願いできますか?そう続けようとしたホークアイの言葉を、アルフォンスが遮った。 「――あれ?兄さん、マリィ、あそこ!!」 . [*前へ][次へ#] |