鋼の錬金術師 熱砂の幻影 夜も明けきれない内にボードワンを立ち、見渡す限りの砂の海を、アーレンの道案内でシャムシッド目指して歩いていた。 しばらくして顔を出した太陽は、地面から熱を立ち上らせ、その熱は皆から口数を奪っていった。 黙々と行進する中、沈黙を破ったのはエドワードだった。 「暑ぃぃ・・暑ぃぃぃぃ・・・・・暑すぎるぅぅぅぅぅ・・・・・まーだシャムシッドには、着かないのかようぉぉぉ・・・・・」 右腕と左足が機械鎧のエドワードは、そうでない者より熱さの伝わり方が違う。 熱せられた機械鎧が、他の者より多くの水分と体力を奪っていく。 そんな兄の様子に、アルフォンスは恐る恐るアーレンにお伺いを立てる。 「あの、アーレンさん。シャムシッドまでは、そんなに遠い距離じゃないん・・・です、よね・・・」 「フン!情けねえな。たった、2〜30km歩いただけだろうが」 「たったって・・・・」 エドワードとて、旅の最中に歩くことは多い。むしろ、移動の大半は徒歩だ。 それでも、砂漠の横断はキツい。マリーゴールドも、4人から遅れがちに歩いていた。 「もう少し行きゃあ、シャムシッドの街が見えてくる」 「シャムシッドの街とは、一体、どういう所なんです?」 また歩き出したアーレンの後ろをついて行きながら、ホークアイが尋ねる。 「どうもこうも、今じゃただの遺跡だよ。昔は、王の住む都として栄えた、大きな街だったようだがな」 「アーレンさんの家の資料に、レビス文明はひと晩で滅びたって、書いてあったんですけど・・・」 夕べ、資料を読んだアルフォンスは、レビス文明の詳細を訊く。 「あぁ、そうだ。レビスは、わずかひと晩のうちに滅亡した――ゴーレムに・・・滅ぼされたんだ」 「ゴーレムに!?」 「秘儀によって繁栄した文明が、秘儀によって滅ぶなんて、皮肉なものだ。レビスの王はな、触れちゃいけない”禁忌”に触れた。そして、レビスは無くなったんだ」 「“禁忌”・・って?」 マリーゴールドが、少し疲れた声を出した。 . [次へ#] |