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鋼の錬金術師
怪物の正体7


エドワードは首を振る。

「いや・・知らない・・」

「山に囲まれた、葡萄の栽培とワイン造りしかない、ちっぽけでのどかな村さ。
その山林を利用して、毎年、北方軍と大掛かりな軍事演習をやってたんだ。
で、その演習場を提供してたのが、ルイーニ・モンテフォルト――マリィのオヤジさんさ」

「随分、気前がいいな」

演習に使われるとなれば、土地も荒れるだろう。
整地するのも手間だろうに。

「何でも、娘が生まれつき身体が弱くて、病気がちだったかららしい。
演習場を提供することで、軍にコネを作りたがっていたらしいって話だ」

「軍に・・・」

「あぁ。軍医は優秀なのが揃ってるからな。でも、2年前だったか・・・
急に、土地の提供を断ってきた。ヒューズ少佐が慌ててたのを、覚えてるな」

そこまで言うと、大して吸わずに短くなったタバコの火を、靴裏にこすりつけて消した。

「俺が知ってるのはこのくらいだ。大佐や少尉なら、もうちょっと詳しいかもな。食事に招待されてたから」

「そっか・・・」

吸い殻を、ポケットから取り出した携帯灰皿に押し込む。

「さて、行くか。ここまででいいぜ、エド」

「車まで送ってくよ」

「バカいいなさんな。そしたら、俺がグロースターさんとこまで、送らなきゃならないだろ」

「大丈夫だよ」

「大丈夫じゃないよ。お前、まだ子供なんだから」

「子供じゃないって」

ムキになるエドワードの頭を、ハボックはポンポンと掌で叩く。

「あんまり、大佐に心配かけんなよ」

「はあ?大佐が心配なんかするわけないだろ」

急に優しい声音で諭され、しかも、マスタングが自分を気付かっていると言われて、声を荒げる。

「ははは、だから子供なんだよ。じゃ、中尉をよろしくな」

「・・・・・・」

ヒラヒラと右手を振りながら歩いて行くハボックを、エドワードは憮然とした顔で見送った。




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あきゅろす。
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