鋼の錬金術師
再臨1
村の中心から少し外れた場所で、一軒の家が燃えていた。
ホークアイは銃を構えたまま、慎重に近づく。
「銃声が聞こえたのは、この辺りね」
燃えている家に近づき家の中の様子を窺うが、燃え盛る炎以外、動くものはなかった。
「ねえ兄さん・・この家、ついさっき壊れたんじゃない?」
「“壊れた”じゃなくて“壊された”だよ」
まだ勢いのある炎にアルフォンスが言うと、エドワードは腕を組んで訂正した。
「怪物が、近くにいるのかな」
「それも、とんでもない怪物が――ね」
「もしかして、さっきの鳴き声・・」
先程聞こえた声の主は、間違いなく怪物だろう。銃を握る掌が汗ばむ。
「とにかく、辺りの様子を探ってみましょう。マリィちゃん、単独行動はダメよ」
緊張の面持ちでマリーゴールドが頷くと、辺りを手分けして探りはじめる。
エドワードとマリーゴールドは、家の左手へと歩いて行った。
「おい!ちょっとこっち見てくれよ!!」
エドワードの怒鳴り声に、アルフォンスとホークアイは急いで2人の元へ走った。
少し行くと渓流があり、そこには吊り橋の残骸があった。
「橋が落ちてる・・」
「この橋も、ついさっき落とされたようね」
「綱が引きちぎられてる。よほど重たいものが通ったのかな。銃を撃った人は、この橋を渡ったのかな?」
渓流の深さはさほどではないが、降りて渡るには時間が掛かりそうだ。しかも、対岸までは距離がある。
「うーん、この距離だと錬成で直すのは、ちょっと難しいな。向こう岸に届く前に崩れちまう」
ここで試行錯誤している時間はない。
エドワードの言葉に、ホークアイは即決した。
「他の道を探すしかないわね。さっきの広場まで、いったん戻りましょう」
4人は来た道を引き返すことにした。
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