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鋼の錬金術師
死の村5


「はあっはあっはあっ―――」

足がもつれて膝と両手が地面につくと、被っていた帽子が音もなく落ちる。
イヤな汗が、顔だけでなく身体中から噴き出している。

「止まるな!走れっ!!」

ところどころ焼けて黒い焦げができた青い軍服が、後ろから腕を掴んで上半身を引っ張った。
その2人の背後に、木々をなぎ倒し闇が迫ってくる。
それを一瞥し、膝に手をついて立ち上がる。

「わかっとるわい!!」

落ちた帽子を拾い上げ、ヨロヨロと走りながら頭に押し付けた。


息も絶え絶えに走りつづけていると、前方に見覚えのある家が見えた。

「村長の――い、えだ――」

まだ無傷の家の前で、2人は立ち止まった。

「この家に隠れて――」

「うわぁ!!」

「あっちぃ!!」

光線のように、火炎が後ろから一直線に2人を掠めた。
直撃を受けた家は、あっという間に燃え上がる。

「おい!こっちだ!!」

黒い煙りが昇る家の左へ逃げる。道の先には釣り橋があった。
2人が転がるように渡り切ると、追いついた怪物がこちらに気付いた。
地響きを立てて向かって来るが、橋の中ほどで怪物自身の重さで落ちてしまう。

「やったあ!」

手を這叩いて喜ぶが、怪物はすぐに這い上がってくる。

「くそったれ!!」

手早く弾倉を詰め替えると、怪物に撃ち込んだ。



――時間稼ぎにしかならねえか



「先に行けっ!!」

「あんたはっ!?」

「いいから早くっ!!」





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