鋼の錬金術師
死の村3
東方司令部を出て、ボードワンに到着したのは、あと1時間もすれば陽が沈み始めるであろう時刻だった。
軍用車から降りた3人の目に映ったのは、破壊の限りを尽くされた無惨な村の姿。
生い茂る木々は薙ぎ倒され、焼き払われた家々の壁は、煤けて真っ黒に染まっている。
「ここが・・ボードワン?」
「なんなんだよ、これ・・・ムチャクチャじゃねーか!」
「まるで・・死の村ね・・」
まだ焦げ臭い臭いの残る空気に、ホークアイは顔をしかめて呟いた。
「あ、あれは?」
アルフォンスが前方を指差す。
「ハボック少尉の乗って行った軍用車だわ」
3人は近寄って調べたが、案の定ハボックの姿はなかった。
村へ向かおうと歩き出すと、災いから逃れた鳥が音を立てて飛び立つ。
「うわっ!」
「イタッ!」
「わわっ、シ〜!」
驚いて飛び退いた鎧の中から、声が聞こえた。
アルフォンスは慌てて後ろを向く。
「アルフォンス君、いまの声は?」
「あ・・・」
ホークアイの厳しい眼差しに隠しきれないと悟ったアルフォンスは、しゃがむと鎧を繋ぐ革のベルトを外した。中から現れたのは
「マリィちゃん!!」
『エドワード君、アルフォンス君。私は装備を整えてから車を回すわ。表で待っていてちょうだい』
『わかった。行こう、アル』
ホークアイと別れて司令部の廊下を歩いていると、給湯室から腕が伸びてきて、アルフォンスを引っ張り込んだ。
『ななな、何っ!?』
『静かに!私よ、アル』
『マリィ!』
「迷惑はかけません。お願いします、連れて行って下さい」
頭を下げるマリーゴールドに、ホークアイは仕方ないと笑う。
「私たちの傍を離れちゃだめよ」
「−−!!ありがとう、中尉さん!」
「・・・リザよ。そう、呼んでくれると嬉しいわ」
優しい眼差しに、マリーゴールドは頷いた。
「はい――リザさん」
「マリィ、錬成陣が描いてある手袋。着けとけよ」
「あ、うん」
マリーゴールドは地面にトランクを置くと、手袋を取り出した。
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