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鋼の錬金術師
偲び依る魂4


「ヒィィー―ヒィ――!!」

焼けた皮膚から、煙りが立ち上る身体で地面を転がる女を、痛ましく思いながらも、観察するような目でエドワードは見つめる。


「あんたは一体何者なんだ。人間なのか?それとも………」


「あ!」

不意に靴音が聞こえた。
どこに居たのか、暗闇から長い銀髪に赤眼の、コートを纏った男が歩いて来る。

コートから覗く肌に、赤い色の石が埋め込まれている。


「誰だ!?」

エドワードの声に、女は顔を上げる。
男は3人に一瞥もくれることなく、女の前に跪いた。


「可哀相に…身体中、傷だらけになって…でも、もう大丈夫だ」

そう労ると、胸の前で両手を合わせる。
その手で、縋りついてくる女の頬を優しく包んだ。

「あっ――!!」

掌から、目が眩む程の光が放たれる。
エドワードは余りの眩しさに、腕で顔を覆った。

「キズが――」

背後でマリーゴールドが呟いた。

傷が治ると、女は安堵の表情を浮かべ、男の胸に頬を寄せた。


「こんの野郎!!」

エドワードが拳を振り上げて、男に向かって行く。だが、拳が当たる寸前
ふたりの身体が黒い液体に変わり、ドロドロと流れ落ち始める。

「うわっ!!」

攻撃対象を失って、もんどり打って地面に倒れ込んだ。


「大丈夫!?兄さん!」

「ちっくしょう……」

駆け寄ったアルフォンスとエドワードの目の前で、ふたりは錬成陣の中へ吸い込まれていった。



「消えちゃった…」

「一体、何がどうなってんだ…」

呆気にとられていたが、アルフォンスはすぐに冷静さを取り戻す。

「でも、さっきのは錬金術だよね。しかも、兄さんと同じ」

「姿を消せるなんてあり得ねえ!!ヤツも、人間に化けた怪物なのか?いったい何だってんだよ!」

怒りに任せて吐き出せば、溜め息混じりにアルフォンスが言う。

「結局分からないことが増えただけで、何の手掛かりも得られなかったね」

「いや、そうでもないぞ。アル」

2人が溶けた場所に、月明かりを反射して光るモノがあった。それを摘み上げ、アルフォンスに見せる。

「え?これって、赤い石のカケラ?どうしてこんなところに?」

「どうやら、ヤツらと石には何か関係あるみたいだな…
絶対に、正体を突き止めてやる」

「エド…」

「あ?どうした、マリィ」

勢い込むエドワードに、立ち竦んでいるマリーゴールドが声を掛けた。

「あの人だ…」

「何が?」

「お父さんが言ってた人……」
「えっ!?」

「じゃあ、あの男の人がマリィの捜している医者なの?」

「まさか!」

信じられないと、目を見張る。
それでも、ふたりが消えた錬成陣に虚ろな眼差しを向けたまま、マリーゴールドは言った。





「ううん、間違いないわ。あの人よ」







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