鋼の錬金術師 03 銃を撃つ間もなく、エドワードの拳や蹴りが飛んで来る。 撃っても、アルフォンスの鎧が弾いてしまう。 その上、大きな体躯に似合わず俊敏な動きに、戦い慣れしていないレト教の信者は、あっという間に地面に這いつくばった。 「くそっ!こいつら強いぞ。怯むな!応援を呼べ!!」 更に人数を増やそうと、何人かが走り出す。 「まだやるの?あんたら弱いくせに、しつこいねえ」 力の差は歴然としているのにと、信者の諦めの悪さに、エドワードはウンザリした顔をする。 「くっ…掛かれ!掛かれーっ!」 小馬鹿され、声を張り上げた。 「何をしてるんですか!?」 後ろから聞こえた声に、信者たちは振り返る。 声の主を確かめると、露骨にイヤな顔をした。 「あん?」 エドワードとアルフォンスも、動きを止める。 「ちっ、ロゼか…面倒な時に…」 信者の後ろに、長い黒髪の女性が立っていた。 クリーム色のワンピースがよく似合う、褐色の肌に大きな黒い瞳。 かなりの美少女だ。 「あなた達、大勢で寄ってたかって乱暴を働くなんて!」 「ちょっと、君!こっちに来たら危ないよ!」 ツカツカと歩いて来るロゼを、アルフォンスは慌てて止める。 だが、彼女は気にもせずに近寄ると、毅然と言う。 「そのような罪深いことをして。今に我らがレト神から、天罰が下りますよ!」 信者たちは、苦虫を噛み潰した顔をする。 先頭に立っていた男が、忌々し気に命令した。 「こんな時にロゼに会うとは、ついてない。退くぞ!!」 「あっ!?ちょっと、どこに行くんです!この人たちに、お詫びの言葉もないのですか!?」 踵を返し、足早に立ち去っていく信者たちを、咎めるように目で追った。 「ありがとう、もういいよ。ボクたちなら、大丈夫だから」 思わぬ助け舟に、アルフォンスは、ロゼに感謝を述べながら近寄った。 _ [*前へ][次へ#] |