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小説
深い海の色

 ただの我が儘だってこと私にだってわかっている。ただ、その君の操る魔術が綺麗とかそんな事ではなくて…

まぁ、否定はできないが。

初めて護衛の目を掻い潜って、城の裏にある森に入った。その時の自分は森の湿った温度も空気も本当に新鮮で、周りをきょろきょろ見回しては頬を赤く染めていた。
目を見張るような不思議な草花も数多く生えていたし、私は思わず紅い母様の髪の色をした花に手を伸ばしていた。
その途端手に感じた鋭い痛み。習い始めた剣を思い出した。まだ木刀を握ることしかしていなかったが、できた豆を潰したときは痛かった。
唖然と手にした花を見る。その花はどす黒く変色していた。ジクジクと広がる痛み、思わず眉間に皺がよる。そのうち今度は意識まで朦朧としてきた。

うとうとしてきた時右端のほうでガサリと音が聞こえてきた。チラリと回らない首を振ると少女と目があった。その子の瞳はこの森にはない深い海の色と、澄んだ空気を持った瞳だった。
握りしめた花をもう一回強く握りながら静かに目を閉じる
 大きな大木に遮られたこの森は、本当に精霊が住んでいたんだと思ったものだ





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