Sound lover * 階段を上がっていくごとに、緊張度が増す。 普通の人が入れない5階って、なんかどきどきする。 カツ、カツッ、と響く靴音がやけに響いて聞こえる。 一歩、一歩、5階へと近づいていった。 「ついた。 この扉のここにカードを当てるのかな?」 那音は目の前にあった機械にカードキーをかざした。 ピーッ、 音と共に青いランプが点灯し、ドアが開いた。 確か、特別室3だよね。 とりあえず左側にいってみよ。 自分の勘のまま進んで行くと、特別室3があった。 「ここだね。」 再びカードをかざすと、扉がまた開いた。 中に入ってみると、即座に目がいったのはピアノだった。 「うわぁ、凄い! ベーゼンだ!」 ベーゼンドルファー それはスタインウェイ、ベヒシュタインと並んで世界のピアノメーカー御三家の1つである。 ベーゼンドルファーは97鍵の鍵盤、エクステンドベースをもつことが有名である。 簡単にいうと、普通のピアノより少し下の音が弾けるということ。 「僕の家にはスタインウェイはあるけどベーゼンは初めて! もしかしたら他の部屋にスタインウェイやベヒシュタインもあるのかな? 確かベーゼンの音色は至福の音色って言われてるんだよね。 よし、弾いてみよ!」 蓋をゆっくり開き赤いキーカバーも外す。 そこには綺麗に手入れされているのか、まるで買ったばかりのような白鍵と黒鍵がある。 那音は吸い寄せられるように鍵盤に指をおいた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |