卒業に寄せて/土方
「トシいるー?」
『あ、いますよ。ちょっと待ってて下さい』
『土方先ー輩!!彼女さんが迎えに来てくれてますよー』
『!?ちょ…待ってろ、すぐ行く!!』
「はいはーい♪じゃ、校門のところで待っとくねー!!」
卒業に寄せて
FROM 土方
『はぁ…いいですね、土方先輩は』
『あ?』
急いで着替える俺に、後輩が話しかけてくる。
本来、俺は部活を引退しているのだが、
進路が決まってからは、週に2、3日は、剣道部の練習に顔を出している。
警察学校に行くことになったから、
ナマっている体を少しでも、元通りにしとかなきゃな、と思って。
でも、それも今日まで。
俺たちは明日、卒業する。
『あんなに可愛い彼女さんがいて。』
『おまっ…可愛いって…』
『しかも、超モテてあるじゃないですかー。うらやましいなぁ』
『ばっ、馬鹿言ってんじゃねェよ。オメーも彼女いんだろーが?』
『いますけど…それよりっ、どっちから告ったんですか?』
『なっ!!』
『俺の予想だとー、土方先輩?』
『なんでそーなんだよっ!?』
『ベタ惚れじゃないですか』
『っ…。帰る!!』
『もー、照れちゃってー♪』
『っるせーよ!!』
『…まあ、お幸せに』
『…あァ。じゃあな』
『お疲れさまでしたー』
「あ!やっと来たー。トシー!!こっちだよー!!」
『おう、ごめんな、待たせちまって、』
「全然いーよっ!!帰ろうっか♪」
どちらからともなく、手を繋ぐ。
なんでもない、他愛のない話をしながら、ゆっくり歩いて帰る。
全ての瞬間が、俺にとっては大切なんだ。
…今日までだけど。
「だからさー、結局あたしがするハメになっちゃって!!」
『まあ、志村(姉)には逆らえねわな』
「そうそう!!お妙ちゃんって、可愛いんだけど、怖いからさー」
“うらやましいなぁ”
さっき後輩から言われた言葉を思い出す。
確かに、俺は幸せ者だと思う。
学校の中でも人気のあるコイツと付き合ってるんだから。
本当はたまに思うんだ。
“俺でよかったのか”って。
まあ、一回聞いたら、怒られたけど。
「あたしはトシを好きなのーっ!!」って。
ちょうど、家に送ったら、家の前に誰かが立っていた。
『あの…!ちょっとだけ、いいですか?』
「え?あたし!?」
ちらっと俺を見て、どうすればいい?と目で聞く。
俺は、頷くだけ。
そして、その男子の告白は終わっ帰っていった。
「トシは…あたしが告白されて、妬いたりしないの?」
『は?』
「いつも…引き止めようとしないから。」
ああ、それは…
『あいつらも、お前の事を好きなんだろ?だったら、気持ちくらいは伝えさせていーじゃねぇか。』
「へ?」
『俺は、お前に気持ち伝えられたけど、他の奴だって、伝えることくらいしねーと、不平等だろうが』
「そっか…でも、もし、もしもだよ?あたしが告白おっけーしたら…」
『ありえねーだろ、それ。』
「はい?」
『俺、お前にベタ惚れされてる自信あるぜ?』
「っ!!トシ…ズルイよ…」
『は?』
「そんなカッコいい顔して、そんなこと言うなんて、ズルイ…////」
『・・・』
「ちょ…聞いてるの?ト…ん…ふ…ぁ…」
ああ、聞いてるさ。
嬉しくて、可愛くて、心臓がはち切れそうだ。
俺の胸を、苦しそうに叩くお前を、本気で愛しいと思う。
ずっと、ずっと…
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