ギャグマンガ日和に転生しますた
*
「本当にゴリラじゃないんだな、いてっ!」
「大王、しつこいですよ。あの、すみません、うちの大王が勘違いしたようで」
「あ、いえ。いいんですいいんです」
ぺこぺこと何度も頭を下げる、金髪で角が生えた男の人(おそらく鬼男)と、まだスーパータモをこっそり持っている閻魔大王(見えてる)。
今いるのは例の審判の部屋だ。見た目は普通の部屋だが、ここで天国行きか地獄行きか決まる。
ていうかギャグマンガ日和の住人じゃない俺は、ここで裁かれて良いものなのだろうか?
「えっと、ちなみにあなたは……」
「あ、俺、空野優です」
「空野さんですね。大王、この人の審判を」
「えー面倒だな……えーっと、空野、空野……」
分厚い閻魔帳をぱらぱらとめくる閻魔大王。
ていうか、ずいぶんテキトーに流し読みしてるけど、ちゃんと探してんのかな。
しばらくして、閻魔大王が「あれ」と一筋、汗を流した。
「ソラノスグル、だよね鬼男君」
「ええ、ソラノスグルさんです」
閻魔大王は、焦ったふうに「あれあれ」と言ってから、もう一度表紙からページをめくっていく。
ああ、これは……住んでいる世界が違うから、閻魔帳にも載っていないのか、な?
「お、鬼男君」
「どうしたんですか? 速くしてください大王。後ろ詰まってますよ」
「わかってるよ! でも、ソラノスグルって名前の人物が彼の見た目年齢には、一人もいないんだよ! 君、十代だろ?」
「え、あ、はい。十七です」
「無いよ、君の名前! どうなってんのコレ!」
いや、俺に言われても……理由は多分異世界から来たからだろうけどさ。
少し黙り込んだら、また閻魔大王はタモを構え、新種のゴリラうんぬんを言う。ゴリラ違うから!
「あーもうめんどうくさい。名前が無いんなら書き込んでやる! ウリャッ」
ささっと、筆を持って閻魔帳と半紙に何かを書く閻魔大王。
「はいこれ、鬼男君」
「えっ、なんですかこれ」
「審判の仕方の基準。ちょっと出掛けてくるからよろしく」
「ええええ!? ちょっと、待ってくださいよ!」
鬼男には半紙、閻魔帳は懐にしまって、閻魔大王は机の前に出た。
「大野君、ちょっと来てもらうよ」
これ、連行じゃないよな。
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