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ブレイクデイズ 〜壊された日常〜
復讐編 その3
ブレイクデイズ
〜壊された日常〜
「復讐編」
第3話 山登り




 部活を終えて、いつもどおりの帰路についている。みんなで帰るときは歩きの子もいるので俺も自転車を下りている。

まわりの視線はすごい気になった。罰ゲームを受けてはいないが、受けたメンツと一緒に歩くのもそれはそれで恥ずかしい。

黒と白でコーディネートされたメイド服に猫耳までついているから余計に照れてしまう。

絢香「なんか、桜花さんすごいですね。」

夏樹「そうだよね〜。得に胸のところはちょっと危ないかもです。」

桜花「ちょっと、この衣装はどういうつもりなのよ!!」

直人「おいおい、ご主人様にたいしてその口はないだろう。わかったな!!」

桜花「はい・・・・・。ご主人様。」

あの桜花ですら直人にてなづけさせられている。

直人は案外誰かにああいう格好をさせるのが趣味ではないかと時々思うことがある。

そしてメイド服にさせ、なおかつ命令まできかせられるなんてやけに本格的だ。
しかし、そのことが逆にうれしいこともある。

直人のおかげで普段見れない桜花の一面も見れたことだし。

 だいたい歩いて15分くらいになりみんなと別れた。そこからは直人と一緒に自転車に乗って走り出す。

気がつけば周りは日が沈みかけている。都会の喧騒もかなり聞こえてくる。帰りは大通りを使って帰っていないが、車や電車が走る音はしょっちゅう聞こえてくるのだ。

ふと山登りのことが気になったので直人に聞いてみることにした。

健太「なあ、明日の山登りは本気で行くのか?」

直人「何をいまさら。行くよ。」

健太「なんで急にそんなこと思いついたんだよ?」

直人「たまには外で活動したいって思ってさ。それに部屋ばかりでゲームをやっても面白みがないし、いい息抜きにもなるだろ。」

色んな事をやらせてもなんだかんだでみんなのことを考えてんだな。

山と言えばいったらハイキングかと思ったらちゃんとゲームもするんだなって感じもしたが。

 しばらくしていつもの分岐点に差し掛かって、直人と別れた。明日、山登りに行くということになればそれなりに準備も必要である。リュックがたくさん入っている引き出しから新しいものを取り出す。せっかくみんなで出掛けるんだからたまには使ってないリュックを使ってみることにする。

一通り持って行くものを確認して今日は早く寝た。



そして翌日になった。直人の指示では9時に新宿駅に集合だという。とりあえず、それに間に合うように昨日アラームをセットしておいた。

8時に起きてそれからご飯をたべ、手早く着替えをすませて家を8時30分にでていった。さすがに新宿に住んでいるとはいえ、駅までは自転車で30分はかかる。相変わらず東京ってのはがやがやしててうっとおしい。

俺の従兄弟のうちは山形県なんだけど、そっちのほうがさわやかというか気持ちのいい感じがする。都会の雰囲気を忘れてたまには自然に触れるのもいいことだと俺は思う。

駅をしばらく歩き、指定されたポイントを探す。言われたポイントは改札前のちょこっとしたスペースだ。

そこを見てみるとすでにいつものメンバーが待っていた。こっちに気づいたようなのか桜花がこっちに手を振ってきた。

さすがに声をあげるとまずいので軽く手を振ってあいつらのとこへと向かった。

桜花「結構遅かったわね。」

いきなり来て桜花に文句を言われた。だが時計を確認してみると、出発までまだ時間がある。

しかも集合の9時までにはまだあと5分残っている。


健太「そうか? まだ集合まで5分残ってるぜ。遅刻ではないだろう?」

そんなことを言うと、桜花が発言するまえに夏樹が補足してくれた。

夏樹「今日の桜花さんはとっても早起きしたのです。」

健太「え? どういうことだ?」

絢香「桜姉は健太や私たちのためにね弁当とデザートを作ってきてくれたんだよ。」

夏樹「そうですよ〜。桜花さんの愛情たっぷりのお弁当ですよ〜。」

これには驚いた。昨日の指示では各自で弁当を持ってくるよう指示があったが、桜花は自分だけでなくみんなのぶんまでま作ってくれたのだ。

しかももれなく桜花の手作りのデザートがついてくる。これほどうれしいことはない。夏樹の言葉を聞いたのか桜花は顔をあかくして反論をする。

桜花「別に健太のためだけに作ったんじゃないわよ!! みんながいっぱい食べれるかなと思って作っただけよ! それにデザートを作ってって言ったのは直人よ。」

この言葉を聞くことによって、今まであったどこか暖かい心は消えていった。

直人の指示ということはこのデザートはあくまでゲームの景品ということなのだろう。

まったく直人は昨日そんな指示だしてたのかよ。まあ桜花が反論できなかったのは昨日の罰ゲームのせいなのだろうと予想はつくが。

そんな会話はそっちのけで直人は目をつぶって壁に寄り掛かっている。いかにも客観的に見ればクールキ
ャラの印象を持たせてはいるが、この姿からは想像できないえげつない心を知っているのは俺達だけかもしれない。

ようやくあいつは目を開けてこっちに近づいてきた。

直人「まったく健太は何を考えているんだ。これは遠足じゃなくて部活という認識をちゃんと持ってほしいな。」

健太「なんだよ〜。デザートはゲームの景品だったのかよ〜。」

直人「昨日の罰ゲームで桜花に依頼しておいたのさ。さてそろそろ時間だから行こうか。」

直人の指示で俺達全員は動く。切符売り場で東京郊外行きの切符を買って改札を通った。

 やっぱり東京の駅はつねに人がいて混んでいるものだ。改札を通った先にも人はたくさんいてうっかりしたら完全に迷子になるかもしれない。

俺はみんなに意識を配りながらホームへと向かった。集合時間から10分後に郊外行きの電車がやってくる。

郊外に行くとはいっても人は相変わらずだ。向こうから通勤で来る人もいれば、都会の方から郊外に行くという人もいる。電車のなかでは他のお客に迷惑にならないように各自自由に行動をした。

俺と桜花で適当に雑談し、夏樹と絢香は二人で音楽を聴いている。直人は読書をしている。こんな人がい
る状況でよく読書に集中できるなと心の中で思った。その集中力が勉強に活かされているのは言うまでもない。

電車の音がこの車内にこだましている。時々桜花の声が聞き取れないときもある。

桜花「今日はいい天気になってよかったわね〜。部活のメンバーでこうやってピクニックに行くのも初めてだし。」

健太「確かにそうだよな。まあ直人の奴は部活って言ってたけど、どう考えたってこれはピクニックだよな〜。まあたまにはこういうのはありなんじゃねえかと
思うけどな。」

桜花「きっとみんなをリフレッシュさせたくて連れて来たのよ。」

しかしこの言葉に何故か素直になれなかった。直人がやることにはなにかしら裏があるんじゃないかと俺は感じている。
健太「直人のことだ。きっとなにかしらあるんだろ。」




 電車が揺れながら俺達の目的地の駅へと誘った。



目的地があるとされる駅にようやく着いた。電車に乗って約1時間ぐらいかかったと思う。そして周りには木がたくさんそびえ立っていてそれがいくつにも連な
りあちこちに山を形成している。この地がこの土地を囲むようにしてね。

そしてその中に町があるようだ。山に囲まれているもののちゃんと人が暮らせるように町並みがあり、所々にはマンションや住宅地がいくつも見える。

しかし何よりも気になるのは何故直人がこんな場所を知っているのかということと、何故俺達をこんな場所へと連れて来たのかということだ。

こんなことを考えながらも直人の指示に従って後をついていく。

しばらく歩いて行くと目の前の大きな山に入る入口
がある。

その入口は人の手が加えられておりちゃんと山に入れるように整備されている。ということは何人もこの山に入っているということになる。

何よりも安心したのは変な山に入らず普通の山に入ることだった。早速その入口から山へと入って行く。

上を見上げても空はあまりよく見えなかった。何故なら木が上を覆っているためである。山はやっぱりこ
ういうのが自然なんだろうな。


健太「ったく結構登ってるのに頂上はまだなのか〜?」

直人「もうすこしの辛抱だ。がんばって登るぞ!!」

夏樹「部長はのりがいいですね〜。でもさすがにきついです。」

桜花「確かに夏樹の言うとおりだわ・・・・。山に登るのは久しぶりだからすごい疲れるわ。」



ここからさらに30分時間をかけてようやく頂上に着いた。ここにきたときはもう足が棒の状態になっていた。

とりあえず鞄を近くの岩場に置いて時計をみると、時刻はすでに12時になっていた。かれこれ1時間ずっと登りつづけていた。

あれだけ登りつづけたのに言い出しっぺの直人は疲れをみせず山からの景色を眺めていた。

山からの景色はそれはもう絶景だった。

いつも都会に住んでいる俺達にとってはあまり縁のないものだ。見渡すかぎりは山と木があり、所々だが町
もみえる。それに空は快晴で青く澄み渡っている。言い方が大袈裟かもしれないが俺にとってはそれだけの感動があった。

その感動は俺だけが感じたものではなくこの場にいた全員が同じ気持ちを感じている。ある程度の景色を見渡し、昼食の準備を始める。

夏樹がみんなで食べれるようにとシートを持ってきてくれたので手分けをしてそれを敷いた。多人数を考慮したのかかなりの大きさだった。

各々持ってきた弁当をその座敷の上に広げた。今日の弁当は何かなと期待して開けてみると、鶏の唐揚げがいくつかとウインナーが2本、それからフライドポテトが何本か入っていた。

まあ弁当にいれて喜ぶおかずなんてまあこんなもんだよな。みんなを弁当を見渡してみると、いつものような感じかと思ったが、桜花の弁当だけはいつもと違っていた。桜花は確か、今日の弁当を自分で作ったと言っていた。

それだけではなくみんなの分まで作ってくれたと言っていたから、俺はかなり期待しているぞ。

そしてみんなが注目していた桜花の弁当箱が登場する。それを見てみると玉手箱のようにいくつも弁当箱が乗せられていた。ざっとみて五重くらいはあるだろうか。

その蓋を彼女が開け、中をみるとかなりの量のおかずがあった。ハンバーグや肉じゃが、鶏の唐揚げ、フライドポテト、野菜炒めなどの数々のレパートリーだ。

桜花「今日は、張り切ってちょっと作りすぎちゃってさ、だからみんなでおかずを食べましょ。」


絢香「お、桜姉すごい数のおかずだね〜。じゃあ私も頂こうかな。」

夏樹「どれも美味しそうですね。じゃあ私はこれをいただきます。」

健太「おし、俺はこのハンバーグを1つ貰うぜ!」

箸で具をしっかり持ち、ゆっくりと口へ運ぶ。そして、それをゆっくり口の中で噛んでいく。噛んでいくうちに広がっていく肉の味とソースがもうたまらなかった。

普段食べているはずの食事がいつもよりおいしく感じる。

何故だろうか?やっぱりこの情緒がある自然の風景をみて、仲間と一緒に食事をしているからなのかな。

それな作っている人間が桜花だからかもしれないな。

健太「うん!うまい!!」

夏樹「やっぱり桜花さんは料理が上手なのです。」

桜花「よかった〜。みんながおいしいって言ってくれてうれしい。早起きしたかいがあったわ。まあ、もとはと言えば直人の命令だったんだけどね。」

昨日の罰ゲームのついでにお願いしておいたようだ。これに関しては直人に感謝だな。

メンバーが5人だけあってお弁当の中もあっという間に空になってしまった。みんな食い意地があるようだ。

食事をすべて終わらせた後、すばやく片付けを行う。そして、早速ゲームを始めることにした。






次回へ続く



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あきゅろす。
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