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学生時代
怠惰

「高1の夏休みって勉強だけはしたくないよね」
隣を歩く梨華が言った。自分の手の届くところに彼女がいるようになって、飛鳥は素直にとても嬉しかった。2人は付き合い始めて、夏休みが始まって今日初めてデートに出掛けていた。
返事を待ってと言われたときは正直焦ったが、彼はあまり考え過ぎない方なのだ。
「かな。俺はどのみちほぼ毎日部活だから」
梨華ははっとして「そうだよね。大変だ。練習試合は応援にいくから」
飛鳥は慌てた。「気持ちだけで嬉しいから良いよ。どうせ俺はまだベンチなんだから」
「あは、じゃあ学校で練習してるの見にいこうかなあ。差し入れとかやってみたいし」
梨華はにこっと笑って、やっぱりカールした髪がゆれた。今日初めてみる私服もワンピースを着てきてくれたことが飛鳥にとって一番嬉しかったことだが今の言葉も同じくらい嬉しかった。

映画は面白く、その後に入ったカフェでも2人の会話は別段気詰まりでもなかった。店内は涼しく冷房がきいていた。

飛鳥は良いぞ俺この調子だと内心ガッツポーズで、そのままゲームセンターに行き、暗くなる前に梨華を駅まで送った。

「……すごく良い人だよ。全然タイプも違うから大丈夫。好きになれると思う」
梨華は携帯を取り出してそう話し、言いながら自分の言葉に苦しんでいた。
私は忘れるの、忘れて新堂君を好きになって振り返らなくなってもう思い出にしてしまうのかと自問した。
「…だけど本当は」
「真っ当な道を歩くべきだわ」
電話越しにきく美咲の声は梨華にはとても冷たく響いた。

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