袋法師絵師
袋法師 訳文 第四段
第四段
尼御前に自分たちの恋を奪われてしまったのではないかしら。中島で楽しいことをした女たちは、尼御前が寝ている隣の部屋で眠っていたら、隣の部屋の奥から心地良さそうな喘ぎ声が洩れ聞こえてきて、三人の女たちはなにやら胸がときめいてしまい、眠るにも眠られなくなってしまい、そのまま夜を明かしてしまった。三人の女たちは尼御前がうらやましくなり、みな口々に、
「もともとあれは私たちの恋、秘蔵の袋なのだから、お返しくだされませんか。」
なとど申し上げようではありませんか、と囁きだしたのであったが、乳母は二人を諭して、
「確かに楽しいことではあったけれども、あれはやはり罪深いことでもあったでしょう。私たちの持物の中に、このような貴重な形をしたものがあるではありませんか。まず、今日のところはこれで、そのからだのたぎりを済ませなさい。尼御前さまの心の病が晴れたときにはきっと、返してくださるお言葉があるはずですから、それまでお待ちしましょう。」
と、持物の中より張形を取り出しながら彼女らを慰めた。それを見た女たちは自らの持物から張形を出し、三人、思い思いに自らを慰めつつ、その胸のほてりを癒すのだった。
そうして、夜も明け方近くなった頃、三人の女たちは、
「さぁ、人に見られぬうちに、早く早く！」
とばかりに尼御前の部屋の中を覗きに行くと、この山寺の法師は狸寝入りを決め込んでいて、本当に本当に音も立てず、死んだように眠っていた。そんな様子を見た女たちはどうすることもできず、その空しさに夜も本格的に明けてゆき、嘘でも人に見られれば、周りの女たちが浮き足立つかもしれぬと思ったので、目の毒、そして気の毒とばかりにまた、法師を元の袋の中へと戻し、袋の口をきゅっと結んでしまったのであった。
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