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焼失した未来 2
その後、住民と村に雇われた傭兵ギルドとの協力でなんとか近隣に燃え移る事態は回避したが、宿はほぼ全焼してしまった。
泊まる所をなくした客たちは、狭いながらも村の集会所にしばらく身を寄せる事になった。
一間に押し込められた客達はほとんどがもう眠りについている。

埃っぽい集会所の広間の一角で、他の客を起こさないようスナフは小声で呟いた。

「落ち着かねえな…しかも何か埃っぽいし…」

「普段はあまり使わないんでしょう。手入れもされてないみたいですし」

そう答えると、ライルは窓の桟に指を滑らせた。
指が通った後に通り道ができ、代わりにその指先には埃がたっぷりとついている。

「はぁ…。ところで、これからどうすんだ?」

「そうですねぇ…少し気になる事があるので、もうしばらく滞在したいんですが」

「なんだ?気になる事って」

ライルは右手の中指に光る珠を少し上げて、その問いに答える。

「見た所、ここ一帯は鉱山でしょう?これについて何か分かるかもしれないと思うんです」

ライルの言う通り、このリベリア村は鉱山資源が豊富な事で有名である。
スナフは昔、鉱物に混じって貴重な原石が掘り出される事も多いと、グランに聞いた事を思い出した。

「確かにその指輪、お前の唯一の持ち物だったしな…。
宝石に詳しい人もいるかもしれねーし、明日は色々聞いて周るか」

そうして、二人は明日に備えて眠りについた――


***


「はぁ…疲れた…」

「若いのにだらしないですねぇ…」

「もう何も言わねえよ…」

二人は村の中央にある広場に座り込んでいた。

山間のこの小さな村は、質の高い鉱石を求めてやってきた商人で賑わいを見せていた。
村の外れには、斜面を活かした農作物の栽培も行われているようで、その規模に反して豊かな村に見えた。


火事から一夜明けたこの日、二人は色々な場所で一日かけて色々な人に聞いて回った。
しかし、日が暮れても結局ライルの指輪について知っている人は見つからなかったのである。

「とりあえずさ…日も暮れちまったし、今日はもう休もうぜ…もうヘトヘトだ…」

そうは言ったが、あのなくしてしまった本の事が気掛かりだというのが正直な気持ちだった。

「仕方ないですねぇ…」

肩をすくめて集会所へと歩き出した時だった。

「あれ、お二人ともこんな所でどうしたんですか?」

道の先にはアンジュが立っていた。

「あぁ、アンジュ。ちょっと調べ物をしててな…これから宿に戻る所だ」

「調べ物…何か成果はありましたか?」

その問いに、スナフは肩を竦めて答える。

「いいや…全然だめだ」

「そうですか…。何か私に手伝える事があれば良いんですが…」

その言葉にスナフは慌てて首を振った。

「いやいや、そこまでさせるつもりはねぇって。気にしないでくれ」

「そうですよ、アンジュさんは命の恩人ですからね。むしろ何かお願いがあれば聞きますよ。…スナフが」

「俺だけかよ…。まぁ、こいつの言う通りだ。何かあったら言ってくれよ」

その言葉に、今度はアンジュが慌てて首を振る。

「命の恩人だなんて…言い過ぎですよ。私なんて弱い人間だから…」

最後の方は尻すぼみになったアンジュの言葉にどこか違和感を覚えながら、三人は集会所へと歩き出した。

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