SHUFFLE!-Only good days-
少女の名はリシアンサス?
――それは今から八年前の出来事だ。当時の俺はまだ小学校三年生の少年だった。
彼女と知り合ったのはちょうど公園で遊んでいた時のことで今でもまだはっきりとは行かないでも覚えている。
あれは桜が舞い散る四月の終わり頃だった――
「ふぇえーん、ひっ、ぐすん……」
自分以外誰もいない公園、そこから誰が泣く声が聞こえる。その女の子は迷子にでもなったのだろう、公園の真ん中で座り込むようにして泣いていた。
見るに耐えなくなった僕はその女の子にそっと手をさしのべる。
「どうしたの?」
僕がそう尋ねるとその女の子は泣きながら答えた。
「おとーさんと…はぐれちゃったの」
答え終わると再びその女の子は泣き出してしまった。僕には何をすればいいか分からない。下手に動けばさらに迷子になってしまうかもしれない、もしかしたら変な人に誘拐されちゃうかもしれない。
僕は何にも尽くしてあげることが出来ない。でも一つだけ出来ることがある、それはお父さんが迎えに来るまで遊んであげること。たとえ知らない子でも女の子をほったらかしにしておくことなんて僕には出来ない。
「じゃあさ、僕がおとーさんがくるまで遊んでてあげるよ。君の名前は?」
僕が聞くと、その女の子は目に浮かべていた涙を拭き取り、笑顔で答えた。
「リシアンサス……」
「リシアンサスちゃん。じゃあ『シアちゃん』って呼ぶね。僕の名前は土見稟、呼び方は何でも良いよ♪」
僕とシアちゃんはその後一時間ほど公園で遊んでいた。はじめは余り喋らなかったけどだんだんお互いが打ち解けあって、三十分もしないうちに普通に話すようになったんだ。
その後、シアちゃんのお父さんが見つかり、僕とシアちゃんは別れることになった。
「おとーさん見つかって良かったね」
別れるとき、シアちゃんは先ほどとは違って笑っていた。一緒に遊んでいた時間が一分ぐらいに感じられる。
「ありがとう稟君♪」
シアちゃんは僕にゆっくりと近づくと、唇にそっとキスをした。
唇が軽くふれあうだけのキスだったけど、物凄く暖かい温もりを感じたんだ。
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