SHUFFLE!-Only good days-
背中を叩いたのは
階段を駆け上がり、学校まで全力疾走でたどり着いた俺たちは昇降口のところで息を弾ませていた。
はぁ……もう勘弁してほしいよ本当に、朝っぱらからいやな思いはよ。とはいえ毎回毎回あんなことされちゃたまらないよな。
一息つける俺に周りからは冷たい視線が寄せられる。それがどうしてなのかは数秒後にようやく理解することになる。
「あ、あの稟君……」
「え?」
なぜか楓は顔を赤らめ左手をモジモジさせている。俺は視線をゆっくりと下に向ける、すると俺は楓の手をずっと握ったままだったのだ。
「す、すまん!」
「いえ…稟君なら」
さすがにその発言はマズいんじゃないか楓さん、周りの奴の視線は痛々しく俺の胸に突き刺さる。ぞくに言う殺気と言うものだろうが。
まぁとにかく何とか無事に来れたわけだし良しとするかな。
「あ……」
楓が突然声をあげ、俺の後方を見つめる。その刹那、響きの良い音が鳴ったかと思うと突如痛みが俺の背中を襲い、前方に倒れ込む。
「はーろ〜。稟ちゃん♪」
背中をたたいたのは、ショートボブの緑色の髪をリボンで束ねている俺たちの一個上の先輩の時雨亜沙先輩。
中学校の料理クラブで知り合い、いつも元気で天真爛漫な性格の良い女性だ。無論ファンも多い。
「あ、亜沙先輩……朝っぱらからは勘弁してくださいよ」
「ん〜、それなら……」
何かを思い付いたのか亜沙先輩は俺の方へ歩み寄ってくる。そしてニコッと笑ったかと思えば、俺の腕に自分の腕を組んできたのだ。
柔らかな胸が俺の腕に当たり、亜沙先輩の温もりが身体中に伝わってくる。当然ここは下駄箱なため、周りからは冷ややかな視線が俺に集中する。今日はもう既に二回目か……体持つかな?
そんなことを考えているうちに亜沙先輩は腕を離す。顔を赤らめて笑うその姿には、男子は思わず惚れてしまうだろう。
「じゃね〜稟ちゃん♪」
そそくさと去り行く亜沙先輩、嵐でも去った後のように俺の頭はボーっとしていた。
「稟君、始業のチャイム鳴っちゃいますよ!」
「うん? あ、やべぇ!」
「あ……」
俺は再び楓と手をつなぎながら、教室までダッシュで走っていった。
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