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SHUFFLE!-Only good days-
裏シア



「あたしはシアであってシアじゃない存在。生まれてくるはずだったけど、とある理由で生まれることを拒まれたシアの妹ってところかしら?」


「いや、俺に疑問口調で言われても……」


 なるほど……だいたいの訳がつかめてきたぞ。初めはシアと俺の目の前にいる少女の二人は生まれてくるはずだった。しかし妹の方は生まれることが出来なかったって訳か。でもおかしいよな、どうしてシアだけが生まれてこの少女だけが生まれることを望まれなかったのか、生まれてこなかったのか。

 そこが俺には納得が行かない。第一、俺は神族じゃないため神界のことについてはからっきし分からない。親が研究所で働いていた俊樹なら理由を知っているかもしれないが、あいにく俺には……。しかし俊樹のことについても疑問が残る、名字と名前が漢字だということだ。それは俺が無理に聞くことじゃないし、嫌なら話させるわけにも行かない。


「で、生まれてこれなかった理由っていうのは?」


「うーん、それはシアが直接話してくれるハズよ。稟もそっちの方が良いんじゃない?」


「俺はどちらでも良いけどな……。やっぱり聞くのはやめとくよ、簡単に聞けるものじゃないし」


 それにしてもシアにそんなことがあったなんてな、普段アイツが見せる笑顔からは微塵も感じることが出来なかった過去。俺は見つめてきたつもりでも、シアのことを何も知らなかったのか。


「あたしもね、本当は生まれてきたかった。でも立場上生まれることは出来なかった、シアの中に存在することしかなかったのよ」


「実はな、俺にももう一人の人格が存在しているんだ。シアみたいな感じではないんだけど、今では存在することに何ら抵抗は無い。ただ『弱い』って単語を言われると表に出てきちまうけどな。まぁこれだけはお前に言っておく、俺はお前の存在、シアの妹だということを認める。何も言うつもりも無いし、誰にも言わせない……」


 俺は本気だった。形はどうであれ彼女はこの世に存在している、生きている。その存在、シアの妹だということを認めることが俺に出来る唯一の方法だった。人族の俺は何も出来ない、でも同じ二重人格を持つ者として存在を認めることは出来る。神界だか理由なんか俺の知ったことじゃない、せめてもう一人のシアを悲しませるわけには行かなかっただけだ。


「う、うぅ……」


 よほど嬉しかったのだろうか目の前にいるシアの妹は涙を流し始める。周りに人がいたら変な勘違いをされかねないけど幸い誰もいない、ある意味ではラッキーだったか。


「稟ぐ〜ん!!」


 おっと、いつの間にかシアに入れ替わったのか。本当に器用な代わり方をする姉妹だよ。性格はまるで反対なのに息はピッタリなのな……対応に困る。


「もう大丈夫だよ、俺は妹の存在を認めるから。誰も認めなくても俺は認めるからさ、もう一人で抱え込もうとするな……」


 胸に飛びついてくるシアは俺の胸元に涙のシミを作っていく。こんなところを樹にでも見られたら親衛隊を呼んでの全面戦争になりかねないからな。樹がいないだけでおれはかなり救われると思う。


「さて、まだ時間もあるしどこか回っていくか?」


「うん♪」


 とりあえずは何とかなったのか、まだ神王のおじさんとの話は出来ていないが、いずれにせよ話すつもりだ。いつになるか分からないが必ず、妹の存在を認めさせてやる。でもやっぱり最後はシアとシアの妹が別々に顔を見せてくれるのが俺は一番うれしいんだけどな。


――アリガトウ


「………」


「どうしたの?」


「いや、何でもない」


 確かに聞こえた感謝の声、俺の夢が実現するのはそう遠い未来ではなかった。

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