SHUFFLE!-Only good days-
芙蓉楓の親衛隊
朝、けたたましい目覚まし時計の音で目が覚める。俺の名前は土見稟、国立バーベナ学園の二年生だ。
家にいるのは俺一人だけ、両親は若い頃に交通事故で死んだ。以来、食事や洗濯などの家事は全て自分でやっている。当然だがたまにどこかで食事を済ますこともある。
正直に言うと毎朝早起きして弁当を作るのは辛い。とはいえ頼れるのは自分だけ、こればかりはどうしようもない。
ゆっくりと上半身を起こして台所へと向かい、学校へ行く支度を始める。ダラダラと支度をしている刹那、彼女はやって来た。
「稟君、おはようございます」
体が動くままに玄関に歩み寄る。するとそこにはオレンジ色の髪の芙蓉楓がいた。
俺と楓の関係はただの幼なじみ、それ以上でもそれ以下でもない。ちなみに楓は学園でも一、二位をあらそう美女で親衛隊までいるぐらいなのだ。
まぁそんなわけで苦労しているわけだけど毎日が充実していると思う。
「それじゃあ行こうか」
家の門を出て、学校へと向かおうとすると突然楓の父さんがこちらに向かって叫んだのだ。
「稟君! 私は出張で数ヶ月家を留守にするから楓のことよろしく頼むよ!」
はぃ? 頭の中に疑問が浮かぶ。つまり言いたいことは俺が楓の家に泊まり込みをしろということですか?
妙な妄想を膨らめて行くうちにみるみる自分の顔が赤くなっていくのが分かった。楓もそれに気が付いたのか顔を赤らめた。
え〜朝っぱらこんなことをしていてはきりがないと考えた俺は楓と急いで学校へ行くことに。
そう思ったのもつかの間、俺たちが登る階段の上にはまるで高校生には見えないような老け顔をしたマッチョの男が突っ立っていたのだ。朝っぱらいやなものを見ちまったと思いつつも、階段に足をかける俺と楓。
すると立っていた男は俺たちに向かって話しかけてきた。
「俺は楓ちゃん親衛隊、KKK(きっときっと楓ちゃん)の金剛だ! 土見稟、楓ちゃんを賭けて俺と勝負しろ!!」
先ほど言った楓の親衛隊とはこのことで、いつもだったら五、六人で来るのが今日は一人だからまだ幾分楽である。楓は学園ではアイドル的存在と述べたように、モテない男たちが毎朝楓と一緒に登校してくる俺に嫉妬してこんなことをするのだが、相手にはしていられない。
さて、どうやってこれを切り抜けようかね。ちなみに今までも何度もこんな目に遭っているため、回避とかには慣れている。ある時は秘密の抜け道を通り、ある時は戦ったりと様々な方法で切り抜けているが今回はどうするべきだろうか?
ゆっくり考えている暇は無いよな、うん。
「え〜楓を賭けろと言われましたが、賭けにされた楓さんから相手に一言どうぞ!」
「え…と、私は」
「問答無用!!」
親衛隊のバカはそう言うと階段の一番上から飛んで、下に降りて来やがった。何とも言えないバカだよな……。そんなところから飛び降りたらただじゃ済まないのによ、ではトドメは楓さんの口からどうぞお願いします。
「私は身も心も稟君に捧げたんです!」
それを言った途端、男の体は宙に浮いたまま硬直し、ものの見事に背中から地面に落ちやがった。やはり楓本人の口から言われればダメージはでかいものなのだろうか。 とは言っても今のはさすがに俺も恥ずかしい。いくら出任せとはいえ『身も心も捧げた』なんて言われればちょっとドキッとしてしまう。
まぁ何はともあれ親衛隊を追っ払うことが出来たから良しとするか。
「よし、さっさと行くぞ楓」
「は、はい」
俺は楓の手を引きながらその場を後にして、学校へと向かった。
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