SHUFFLE!-Only good days-
閉ざされた心
俺の両親と楓のおばさんは死んだ、病院の方たちも最前の治療を尽くしてくれたが病院に運び込まれたときにはすでに心肺停止状態になっていて、ほとんど即死の状態だったそうだ。かろうじて生きていた楓のおばさんも決死の治療は実らず、帰らぬ人となってしまった。
俺は現実をすぐには受けいれることが出来なかった、体が受け入れてくれなかった。あんなに元気だった三人がたった一つの事故でこの世を去っただなんて信じたくもなかった。
何度も何度も問いかけた、しかし返事は戻ってくることはない。なぜなら俺の前に寝ているのはもう生者じゃない、死者だからだ。どんなに優れた医者がいても、どんなに進んだ医療機関があろうとも、心臓が止まったものは二度と……二度と目は覚まさない。
両親の死を知った楓は告別式の最中、気を失った。以来、意識はあるものの心を完全に閉ざしてしまったのだ。まるで生きていることを拒むかのように。
医師からも帰ってくる言葉は繰り返し『手の施しようがない』の一言だった。唯一心を開く可能性があるとすれば方法はただ一つ、楓に生き甲斐を与えてやることだ。
何でも良い、何でも良いから生き甲斐を与えてやれば心を開いてくれるかもしれないということだった。
俺はおじさんに話した、楓の心を開く方法を。その方法を聞いたとたん、おじさんの顔はまるで別人のように変わった。まぁ当然だよな、ふつうに考えてあり得ないような方法だから。
「やめるんだ稟くん。そんなことして例え楓が心を開いたとしても、君は……」
「おじさん、でも楓ちゃんが心を開くにはこうするしか無いんです。例え一生恨まれたとしても、元に戻ってくれるなら俺はどうなっても構いません」
その方法は実に簡単だ、本当に些細な嘘をついた。『三人を呼び出したのは俺だ、俺が殺したようなものだ』という嘘をついたのだ。
本当は楓のことを心配して帰ってくる途中、飲酒運転をしていたトラックが突っ込んだ。
しかしそうすると楓のせいで両親は死んだ、とでも言ってるようなものだ。
本当のことを話したら楓は二度と戻ってこなくなってしまう。俺は楓にはずっと笑っていて欲しい。そう思って俺は嘘を付いた。
結果見事に楓は心を開いてくれた。
俺への復讐を生き甲斐にすることで、俺はどうなろうが構わなかった。楓に死なれるよりも、生き甲斐を見つけてくれたことで、生きようとするなら。
「稟くん、やはりまずかったんじゃないのか? 楓に嘘を付いて、楓から恨まれて……」
「……良いんです。楓に死なれる方が俺にとっては辛いですから」
「稟くん……」
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