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SHUFFLE!-Only good days-
誰も悪くない



「ふぅ……」


 昼食を終えた俺と楓は数ヶ月ぶりに墓参りに来ている。数ヶ月来てないだけあって、周りに草が生い茂りうっそうとした光景が広がっていた。

 それでも何とか時間をかけつつも、周りに生えた草をすべてむしり終えた俺は、そのまま楓の方へと向かった。


「……」


 一時も声を出さずに墓の前で合掌をする楓。楓が合掌をやめるまで、俺はしばらくその場でたち続けることに。


「楓、済んだか?」


「稟くん! ごめんなさい、お手伝いできなくて」


 墓参りに来ても楓の律儀で真面目な性格は健在か、そんなこと言われたら俺だって楓の手伝いできなかったんだからお互い様だよ。

 俺は楓のおばさんのお墓の前に座り、マッチで線香に火をつける。立ち込めるケムリが俺の周りに立ちこめ、目にしみる。俺はせき込みながらも線香を石壇の上に置いた。


「あの、稟くん。本当は一人で来た方が良かったですか?」


「何でだ? 楓が誘わなきゃ俺は多分来てなかっただろうし……」


 楓の表情が先ほどとは一変し、神妙な顔つきになる。何かを言いたそうだが、下をうつむいてしまう。


「そんなことないです、稟くん優しいですから。でも……」


「楓、気にするな……誰も悪くないんだから」


「あ……」


 俺の静かな口調が楓の心の核にふれてしまったのか、顔を隠したまま走って俺の家の墓のほうへと行ってしまった。




――楓、今さら過去を振り返ったって真実はもう覆せないんだよ……




 納得は行ってないだろうが、もう過ぎたことだ。気になったとしてもそれは人生の中で偶然起きる出来事。




 それも思いでもほとんど無く、思いだそうとするのも難しい幼少時代の思い出……




 俺は一生、その重みを背負って行かなくちゃいけない。誰からどう思われたとしても。




 楓に再び生きる気力を失ってほしくない、楓にはずっと笑っていてほしいから。




「――なぁおばさん……楓は……いつになったら楽になれるのかな……」


 幼き頃の出来事を思い出しながら俺は涙を流していた。

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あきゅろす。
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