SHUFFLE!-Only good days-
キス
「ああ……地味に疲れた」
「稟さま、大丈夫ですか?」
放課後、様々な殺気をまともに受けた俺は教室の机の上で伸びていた。まさか昼にあんなことがあるとは思わなかったし、ここまで辛いものだとは思ってなかった。
それに親衛隊じゃない男子生徒にも恨まれる羽目になるわ、血の涙を流す奴はいるわで昼休みだという感じはゼロ。
「じゃあ私たち帰りますね」
クラスには俺と楓の二人を残してシアとネリネは先に帰ってくれた。わざわざ俺に気を利かせてくれたようだが、別にそこまで気を使わなくても良いのにな。
「稟くん、帰りましょうか」
「そ、だな」
俺は机から立ち上がり、カバンを手に取る。楓がこちらに近づこうと歩み寄った刹那、下に置いてあった箱に足を引っ掛け、俺の体を引き込んだまま押し倒すような形になる。
何とか倒れまいと足を踏ん張らせるものの、さすがに足の力だけで支えるのは不可能。ものの見事に背中から床に倒れ込んだ。
「あ……」
今現在俺の体は楓に押し倒されるようになっている。いつもより楓の顔が近くにあるため、恥ずかしさから心臓の音が早まる。それだけではない右手には何故か柔らかく、そして温かな感触がある。
俺は恐る恐る右手を見る、すると俺の右手はしっかりと楓の胸をわしづかみしていた。あまりにも突然のことに俺は言葉を無くす、もちろん楓もだ。
理解したのはわしづかみしてから数秒後、頭にのぼった血が元の働きを取り戻し、脳の働きが正常に戻った瞬間に自分がしたことに気がついた。
「か、楓……これは不可抗力による偶然が重なった事故であって、決してわざとだという訳じゃない」
「は、はい……」
「だ、だからその……まず楓が退いてくれないと起き上がれないからさ、まずは退いてくれないか?」
俺が言うがまま、楓はゆっくりと立ち上がろうとする。何とか何事もなく、事が済みそうだと思った矢先にそれは起こった。やはりただでは問屋がおろさなかったというべきだろう。
「痛ッ!?」
立ち上がろうとした瞬間に響き渡る楓の声、どうやら足をどこかにぶつけてしまったようだ。とうぜん足の力が抜け、楓は再び俺の体に身を預けるような形になるが、この時は若干違った。
「!!??」
俺は楓を支えることに成功した、唇と己の胸での支えによって。言いたくはないがキスというものだ。
楓の温かな体温と柔らかい唇の感触、そして髪の匂いが俺に伝わってくる。楓は目を閉じ、俺の首に手を回してくる。
完全に楓に捕まった状態になっている俺は当然身動きすることが出来ず、楓が我に戻るのを待つしかない。
幾分経ったのだろうか? 俺には五分にも数十分にも感じた時間だが、恐らくそんな長い時間は経っていないと思われる。
「ごっ、ごめんなさい。私ったら自分を失っちゃって……」
「いや、それは良いからさ」
ようやく我に返った楓は顔を真っ赤にしながら、手をもじもじとさせる。何とも可愛らしい表情だが、それよりなにより楓の怪我の方が心配だ。
そんな訳で俺は楓をおんぶしながら帰ることにした。
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