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SHUFFLE!-Only good days-
ネリネとお弁当



「まぁ今回の責任は全てあのバカどもたちだから、つっちーは教室に戻って良いぞ」


「はい」


 職員室に呼び出された俺は、紅女史のおかげで無罪放免となり、生徒指導室から出ることを許可された。

 まぁ何というか圧倒的に親衛隊の数が多かったため、分が悪かった俺の正当防衛が認められたというか何というか……、とにかく助かって何よりだ。俺はひとまず教室に戻ることに。


「うーっす」


 教室の扉を開けると全員の視線が俺に殺到する。どうせ今朝の出来事がクラス中に広まったんだろうが、浴びせられる視線が痛い。

 やったのは俺だけど俺じゃないっていうか、何て言い訳しても意味がないような気がする。それに二重人格だなんて実際に再現しなけりゃ信じてもらえないだろうしな。


「稟くん、大丈夫でしたか?」


「大丈夫、何ともないよ」


 本当はぜんぜん大丈夫というわけでは無いのだが、それでも無傷なのだから多少強引でも大丈夫だと言えるだろう。

 ただやはり周りの男子から集まる視線が痛い。俺は何もしていないのに恨まれるのは、一生逃げれないだろう。


「そういえば、土見くん親衛隊を全員蹴散らしちゃったらしいじゃない。何か悪いものでも食べた?」


「バーカ、そんな訳ないだろ」


 麻弓のせいで自分の秘密を危うく喋っちまうところだった。ただ楓はいつまでも俺の方を見つめてくる、麻弓の一言が楓の気に障ったのか眉が垂れ下がっている。

 こんな表情されると俺は何もいえなくなる上に、理性が保つかどうかの戦いが俺の中で繰り広げられる。楓さん、頼むからその何かをこいねがうような顔をしずめてください。俺の理性がプツリと切れてしまいそうだ。


「あ、そろそろ席に着かないと……」


 ちょうど良いタイミングでチャイムが鳴り響き、俺の周りにいたギャラリーは席につき始めた。


――…


 午前中の全ての授業を終えた俺は、いつも通りに屋上に来ていた。


「あれ、稟くんお弁当無いの?」


 シアの言うとおり、俺の弁当箱は空っぽだった。これには訳がある、その訳とは三時間目に行われた体育。俺たち男子がやったのはただのマラソン、疲れるだけで楽しさはおろか、ただエネルギーだけを消費するだけの過酷な運動だ。

 つまり走り終えた後、体は急激にエネルギー不足になる。それはぞくに言う空腹感となって現れるのだが、その空腹感を満たすものは持ってきた弁当しかない。早弁をしたのは俺だけじゃなく、クラスの男子全員だ。

 ああ、ちなみに樹は早弁しようが何をしようが関係ない、女の子から作った弁当貰うから。


 かく言う俺も購買に駆け込んだものの、めったにお目にかからない争奪戦にぼろ負けしたため、今日の昼食は飲み物だけってことだ。


「あの、稟さま……良かったら私のお弁当少し食べますか?」


「へ、マジ?」


 文字通り、ネリネは自分の弁当箱の中にある玉子焼きを箸でつかみ、落としても大丈夫なようにそっと右手をそえながら俺の顔の目の前へと近づけてきた。確かネリネって料理関係サッパリ駄目じゃなかったか!? ……なるほどね魔王のおじさんが作ったのか。

 しかしネリネは顔を赤らめながら、目の前に出した箸を一回戻す。


「やはり、このような時には言わないと駄目ですよね?」


 それを聞いたとたん、俺は思わず我を疑った。いや、言わないと駄目ですよねって……。何をしようとしているんだネリネは?


「あ、あ〜ん」


「!!?」


 一斉に俺に集まる視線、完全に恨まれたなこれは。とはいえ、折角ネリネがここまでしてくれているんだから男として答えないと……。っていうか誰だよネリネにこんなこと教えた輩は、まぁすぐに一人しかいないというのは分かりますが……なぁ魔王様?

 俺はゆっくりと口を開き、ネリネの玉子焼きを口の中に入れようとしたときだ。


「ああっ」


 不意に小さな悲鳴らしき声が鳴り響くが、それも本当に一瞬で声を出した張本人の楓は、顔を真っ赤にして俯く。

 その隣では麻弓が楓をからかうようにクスクスと笑っている。

 そして元に視線を戻すとそこにはやはりネリネの笑顔があった。ネリネ再び仕切り直しとばかりに俺の口に箸を近づけてくる。

 さすがにここまでくると俺の我慢も限界、口の中に玉子焼きを入れる。周りの視点を伺えば全く関係ない奴らが興味津々とばかりにこちらを覗いている。そこ、いちいちカメラを回すな。

 仕舞いにはハンカチを噛みながら血の涙を流す者もいた。ちょっと待て!? 血の涙って本当にあったのかよ、生まれてこのかた始めてみるぞ。


 散々な目に遭った昼食を終えた俺は男子から殺気全開の視線を浴びることになった。

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あきゅろす。
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