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SHUFFLE!-Only good days-
『裏稟』



「稟くん」


 いつもの朝だ、楓が俺を呼ぶ声が聞こえる。とっくに俺の目は覚めているのだが、何となくけだるい感じが俺を布団の中に留まらせる。

 昨日は休日で、ゆっくり休めるはずだった矢先のシアとのデートのため、休日というよりただの平日のような気がした。

 さらに今日は休み明けの登校日。この日ほどけだるく、面倒くさい日はない。


「後五分だけ寝かせてくれ……」


「そうすると朝ご飯食べてる時間無くなっちゃいますよ? それに今日は稟くんの好きななめこの味噌汁ですし」


「ん〜起きる」


 さすがになめこの味噌汁を出されたら起きないわけには行かない。俺の好物なめこの味噌汁、楓とは幼なじみのため俺の好物を知っているのは分かっていたが、こうも準備が良いところは楓らしいと取るしかないだろう。

 目を開けると必ず迎えてくれる超極上の笑顔は反則、朝から理性が飛びそうになるくらいだ。


――…


「待てー土見稟!!」


 今日は良い日になる、そう思った矢先の出来事だった。玄関を出た瞬間に親衛隊に囲まれた俺は、シアの家を迂回して逃げだそうとしたのだがものの見事に気がつかれ、今じゃ三つの親衛隊に追われる身となっている。

 楓には後でシアとネリネと学校にきてもらうように言っておいたが、その前に俺が無事に学校に着くことが出来るかどうかが不安だ。


「いい加減懲りろよ!!」


 いくら言葉を投げかけても次から次へと押しかける親衛隊の面々。だがそうこうしている内にバーベナ学園の校門が見えてきた、後少しだ。


「困ったら校内に逃げるのか!? ひ弱だぞ土見稟!!」


 誰かが叫ぶとともに俺は足を止める。今会話の中のある単語が、もう一人の俺を目覚めさせてしまったらしい。ちなみに俺は普通の人間ではあるものの、もう一つの人格を持つ二重人格人間なのだ。

 普段はいつも通りの内田龍で生活をしているのだが、『弱い』という単語を言われるともう一人の人格が現れてきてしまう。
 その間、俺は体の中で外の様子を眺めているのだが、実際行動するのはもう一人の人格の方で、自分のなすべきことを成し遂げるか女性に止められるかしない限り俺は表に出ることが出来ない。

 ちなみにもう一人の俺はネリネのような魔法なども使える。つまり見た目は俺そのものだが、内面は全く別人のものだと考えてもらっても良い。


「俺のどこがひ弱だって!?」


「ひ、ヒィィ!?」


 親衛隊の連中もどうやら俺の変化に気がついたらしくゆっくりと後ずさりをしていく。先ほども言ったがこの状態になってしまったら俺の手には負えない。

 ちなみにこのことを知っているのは俺と樹以外誰もいない、もちろん楓も知らない。


「うおぉぉ!!!!」


 気がつかないうちに親衛隊の半数を蹴散らしたもう一人の人格『裏稟』。周りの人はただぼう然として立っている。

 親衛隊もかなわないと思ったのか、逃げ出すものもしばしば出始める。しかしそれを見逃すようなキラではない、たちまち襟足を掴むとスーパーボールのように手玉に取り、投げ飛ばす姿はまさにプロの仕事人、溢れんばかりにいた親衛隊は一人残らず倒されていた。そして仕事をまっとうした裏稟は俺の中へと眠りについたのだ。


「ハァ……やるのは別に良いけど、目立つところでやるのはさけてほしい」


 学園前で派手に騒いだ俺は生徒指導員の大目玉、当然職員室へ親衛隊とともに呼び出された。

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あきゅろす。
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