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SHUFFLE!-Only good days-
レポートという名の精神的苦痛



――階段を野獣のように上っていく親衛隊、俺はそれを下にある掃除用器具庫からジッと眺めてやり過ごしていた。というより眺めて入れるのは樹に助けられたからだ。
 コイツはこう見えてもそれなりに良いところはある。幼なじみではないがそれなりに付き合っているので考えがよく分かる。本当に今回ばかりはコイツに助けられたよ。


「ふぅ……助かったぜ樹」


「君が死んだらからかう相手が居なくなるからね」


 樹らしい理由だな、単純だけど人のことを考えてくれるのが緑葉樹という人物だ。
 さて、時間も時間だしそろそろ教室に戻らないと紅女史の大目玉だな。


「じゃあ戻るか……」


「待ちなよ稟」


――その後、教室に戻った俺は窓から外を見つめて物思いにふけていた。いや、逆にボーっとしてしまい何も考えることが出来なかったと言った方が正論なのかもしれない。
 今まで自分の生き甲斐が何かだなんて考えても居なかった。毎日楓と一緒に学校へ行って、それが当たり前の生活に感じていた。
 思えば楓もシアもネリネも亜沙先輩もみんながそれぞれに生き甲斐を持っているような気がする。
 俺だけが何も生き甲斐を持っていなかっただけなのだ。今になって思う樹の言葉の深さ、よく分からないよ全く……


「自分の生き甲斐か……」


「つっちー♪」


 背後に計り知れない殺気が渦巻く、それは今までにもたまに味わっていたことがある感覚。紅女史の殺気だ……


「明日までにレポート二十枚だ!!」


「そんなぁ〜」


 クラスに笑いが起こる。ちなみに俺がレポート提出を課されたことがあるのは、今ので三回目。
 クラスでダントツトップをひた走るのは俺の悪友、緑葉樹だ。おそらく今現在までに二十回は軽く超えているかと思われる。
 ただ樹の場合はレポート提出などの精神的苦痛よりも、タイヤを引いたままグラウンド五十周だとか、はたまたウサギ跳びで階段三十往復などの肉体的苦痛が主なため見かけによらず樹の筋肉は結構ある。
 ってそんなことはどうでも良い、何はともあれレポート二十枚という強敵を撃破しない限り、明日の朝日は拝めないような気がする。
 とはいえ、紅女史の出す課題はハンパなく多く、更に難しいと来たものだ。それにプラスしてレポート二十枚は徹夜でも終わらないかもしれない。
 いや、俺にはメシアが居るじゃないか、しかも極上の美少女。でも楓に全て押しつけるわけには行かないよな。レポートを取るか課題をとるか悩み物だ。


「どっちにしても大変なのは変わらないよな……ハァ」


 ぐったりする俺を楓が心配そうに見つめてくる。俺はあえて普通に振る舞い、その場をごまかす。以前俺が風邪をこじらせた時に、大慌てで救急車を呼ぼうとしたぐらいだ。些細なことだろうが何だろうが気を抜くことが出来ない。


 俺は今日一日無事に過ごせるかかなり危なくなってしまった。

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