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SHUFFLE!-Only good days-
ネリネの力



「すみません稟さま」


「本当に困っちゃうよね」


 先ほどの出来事について謝罪するネリネ。シアの場合謝罪というより父、ユーストマに対しての愚痴だ。
 俺も両親がいたらシアみたいに愚痴言えたのかなと思うと、妙に胸のあたりが痛む。あの事故さえなければ父さんと母さんが死ぬことは無かった。
 アイツさえいなければこんなことにはならなかった。俺は今でもあのことは忘れない、いや忘れてはならないんだ。
 俺の両親はおろか楓の母親の命まで奪い、さらには知人の優秀な弁護士の権力を後ろにつけ、結局は悪気は無かったとされ多額の慰謝料のみで釈放だ……。当然納得は行かないが、俺も当時は幼い子供で何も出来ない身だった。
 そして俺にはもう一つ、楓にさえも隠していることがある。それは……


「稟くん? どうかしましたか?」


「あ、いや特に何も。昨日は寝るの遅かったからちょっと眠かっただけさ」


 楓が心配する顔を見るとどうも何も言えなくなってしまう。やはり楓が心配する顔が見たくないからなのだろうか、無理をしてでも強がってしまう。
 そんな自分をたまらなく情けないと思うことも少なくはない。


「まぁ気にするなよ、そんなに大したことはないから」


 やはり強がってしまった。ただ楓たちの安心する顔を見ると何も言えなくなってしまう。


「か、楓さん」


 声のする先を見るとバーベナ学園の生徒が立っていた。手をもじもじさせながら楓を見つめるところから楓のことが好き、恐らくはスリーケーの一人なのだろう。
 ちなみにスリーケーとはきっときっと楓ちゃんという親衛隊のユニット名のことだ。


「はじめまして。ボクはKKKの……」


「稟さま、この方は?」


「KKK、きっときっと楓ちゃんとかいう楓の親衛隊だよ」


 やれやれ昨日は誰も来なかったから安心かと思いきやこれだもんな。本当に毎日気が緩むだなんてことは無いよな。
 それにどんなに遠回りしてもどのみち捕まるから普通に登校した方が近い、こういう時こそ神王のおじさんみたいな人が居てくれると助かるのに。


「待て待て待て〜っ! 俺が先にシアちゃんに告白するんだ〜!!」


 制服を着た生徒の後ろから自転車に乗り、猪突猛進でこちらに向かってくる男が一人。
 それからもう一人、そいつはネリネの後ろでスカートを覗いている軍隊の服を着た男だった。
 シアとネリネは悲鳴をあげながら俺の両腕に寄り添う。


「り、稟くん。何なのこれ!?」


「いや、そう言われても……」


 それと同時に三人の男は俺の方へと飛び込んでくる。女性三人に囲まれた俺は身動きが出来ない、いわゆる餌食の的だ。
 その距離は確実に縮まり、わずか一メートルほどにまで縮まった時だった。


「稟さま危ない!!」


 刹那、俺たち四人の周りにはシールドが張られ、爆発が起こる。その爆発によって三人の男たちは空高く舞い上がり、どこかへと飛ばされていった。
 さすがにこの威力は洒落にならない、ネリネの魔力はよほど強力なのだろうが、こんなところで魔法を使うのはまずい。


「リンちゃん……やり過ぎ」


 リンとはネリネのあだ名のこと、名前をローマ字に置き換えると『Nerine』のためそこからあだ名を取っているそうだ。
 男たちを追っ払った俺たちは学校へと向かった。

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