SHUFFLE!-Only good days-
夜の散歩
「ふぅ……」
ネリネが帰った後、俺はソファーへと座りチャンネルを変える。しかし九時にやっている番組とすればせいぜいニュースとかくだらない番組が多く、意味もなくチャンネルを変えるだけだ。
「稟くん、コーヒーどうぞ」
「ああ、ありがとう楓」
話した内容は俊樹との付き合いが正式に決まったということ。悩んでネリネなりに出した結論を否定せず、承認した。
───これでどうなったんだ? 俊樹が桜、リコリス、ネリネの三人と婚約して……俺は不明ってとこか。
「楓、おかわり」
「え? 稟くんまだ残ってますけど……」
「ああ、悪い」
何か変だ。落ち着かないっていうか何て言うか……言葉にうまく言い表せれない。
好きな人はまだいないっていうのに、このむずむずした気分は何なんだ。
───考えても仕方がない、少し散歩にでも出かけるとしよう。
もしかしたら少しは気分転換になるかもしれない。
「楓、ちょっと散歩に行ってくる」
「え!? こんな時間にですか?」
「ああ、ちょっとモヤモヤがあってな。すぐに帰ってくるよ」
「分かりました。気をつけてくださいね」
──…
出て来たは良いものの、何かをする気もなくタラタラ歩く俺。
色々考えることは多いけども考えてばかりでは進まない。
分かっているのに繰り返してしまうのは必然なのだろう。
「稟くん!?」
「稟!?」
「シアにキキョウ!!? こんな遅くに何やってるんだよ?」
「それはこっちのセリフだよ。稟くんこそこんなところで何を?」
「気分転換に散歩をしに来たんだ。シア達は?」
「私たちも似たようなもんだよ」
「あたしは、ただシアが行きたいって言ったから……」
いや、まぁものの見事なツンデレと言うべきか……キキョウには前と比べるとあきらかに明るさが戻っている。
表情もコロコロ変わるようになったし、会話も増えるようになった。
少し前までは存在自体を否定され続けてさえいたのにも関わらず、少しの期間でここまで心の傷が回復したのは俺にとっても驚きであった。
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