[携帯モード] [URL送信]

SHUFFLE!-Only good days-
らぶらぶランチタイム




 昨日の昼休みを思い出す。四時間目終了の合図と共に、まるで短距離走決勝がスタートしたかのような勢いで、生徒達が飛び出していく。

 瞬時に半数近くの生徒が居なくなった教室で、シアがいつも以上にうれしそうな足取りでやってきた。その手に弁当らしい包みを持って。



「稟くん、お昼ご飯行こ」



「……なんだ? 何か妙にうれしそうだけど、今日何かあったっけ?」



「え? そ、そう? 特に何もないけど」



 まあ、うれしいことなら別に良いよな。



――…



「り〜んくん♪」



「ん?」



「はい、あ〜ん♪」



 突然、目の前にシアの笑顔がアップになった。そして、フォークの先端に刺さったシアの手作りなオカズが、俺の口元へと運ばれてくる。



「シアさん? あの、これは一体……」



「昨日のリンちゃんが羨ましかったから、今日は私が挑戦♪」



 ひょっとして、やたら嬉しそうにしていた理由ってまさか……これか?



「はい、あ〜ん♪」



「ほほ〜うネリネ嬢に続いては神界のプリンセスの挑戦という訳ですか」



「稟、殴っていいかい?」



 周囲の勝手な騒ぎの中、口元のオカズは少しも離れない。これはもう覚悟を決めるほかなさそうだ。昨日に引き続き、興味津々な視線が屋上の至るところから集まっている。

 あ、あいつ昨日血涙流してた奴だ。今日も流しているよ、おい……。俺は諦めたように覚悟を決めると、昨日と同じように小さく口を開いた。



「はい♪」



「ああっ!!」



「え?」



 小さな悲鳴にみんなが振り向く。まさかとは思ってみたものの、その発信源はやっぱり昨日と同じ……。



「え……あ、ご、ごめんなさいっ。何でもないんです」



 顔の前で両手を振って、必死でごまかす楓。横で必死に笑いをかみ殺している麻弓の顔が、やたらと印象的だった。ちくしょう。そして、再び緊迫のシーンが再開される。



「はい♪」



 小さく開いた俺の口の中、待ちこがれていたように、シアのフォークがオカズを放り込んだ。

 楓はというと目をつぶりながら、別の方向に顔を向けていた。確かにそれなら悲鳴はでないんだが……罪悪感感じるなあ。

 その代わり、今度は周囲の方から声が上がった。中には死んでやるなどと言った声も聞こえたが、さすがに知らん。勝手に死んでくれ。



「どうかな、稟くん?」



 少し不安のこもった声でシアが尋ねてくる。悩むまでもない。さすが普段から家事をやり慣れているだけのことはある。

 楓と比較しても決して劣らない味だった。まぁ味付けの好みに関しては、さすがに付き合いの長い楓の方が上だとは思うけれども。それは当たり前のことだ。



「充分に美味い」



「えへ。頑張った甲斐がありました♪」

[*戻るッス♪][進むッス♪#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!