SHUFFLE!-Only good days-
二つの豪邸
その夜、夕食をすませた俺は楓の家にお邪魔していた。今朝言ったとおり、楓のおじさんは仕事の出張で家に数ヶ月帰ってこれない。当然その間は楓一人になってしまうため、夜だけでも楓と一緒に居ようということにしたのだ。
とはいえ学園でもアイドル的な存在の楓と一緒に居るのは恥ずかしい。というより俺の理性が持つかどうか危ういところだ。
一緒にテレビを見ているとリビングにある電話が鳴りだす。ホラー映画や怖い話でもしている時に電話が鳴ろうものなら心臓がとまりそうになるだろう。
「え? 出張が長引く!?」
電話の相手はどうやら楓のおじさんらしく、出張が長引くそうだ。とはいえ楓も寂しくないのかな、父親が出張に出ているっていうのに。
ちなみに楓の母親は俺の両親と同じ事故でなくなった。それ以来家事などはすべて楓が担当しているらしい。正直つらいはずだ、しかし俺の前ではあえて何もなかったように振る舞っている感じがする。
「で、おじさん何て言ってた?」
「出張が長引いて一年は帰れないとのことでした……」
楓は一瞬、本当にほんの一瞬だが寂しい表情を浮かべた。やはり何だかんだ言っても楓も女の子、つらくないわけがない。
「楓、俺がここに住み込みでお前のこと手伝うよ」
「え? で、でも……」
「気にするなって、俺の家だったらたまに掃除に戻るし……それにお前を一人にさせてなんかおけないよ」
「稟くん……」
楓は面を食らったような顔をしていたが、クスッと笑い、そして満面の笑顔を俺に見せてくれた。
多分俺が見た笑顔の中で一番可愛かったんだと思う。
「そういえば楓の家の両隣にでかいお屋敷が建ったよな」
「はい、いつか挨拶に行こうと思っているんですが……」
それは一昨日の出来事で、学校に行く前にはすでに両隣八軒丸々引っ越しで家が無くなっていたのだ。
さらに驚きなのが帰ってくるまでに立派なお屋敷が立っていたこと、もしもこの事実が発覚したらどこのテレビ局でも取材に来るだろう。楓の家に向かって右側には、江戸時代にでもありそうな門の和風のお屋敷。
そして向かって左側はイタリアなどに行くとありそうな洋風の家だ。
正直どちらの家もただの人間が住んでいるとは思えない。どーせお嬢様やお坊ちゃんが住んでいるんだと思うが、どうして何度も面倒なことが重なるのだろうか。
「まぁ良いか、よし楓! どの部屋が空いているんだ? 今夜中にある程度の荷物は運び終えたいからさ」
「あ、それなら――」
楓との同居が決定した俺、稟くん。俺の運命はどうなるのやら。
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