SHUFFLE!-Only good days-
見覚えのない魔族の少女
「稟くん?」
「あ、はい!」
少女の投げかけによって妄想から帰ってきた俺は、とりあえず八年前のことについて聞いてみることに。
「君……もしかして」
俺が話を切り出した途端、その少女は時計を見上げ焦り出す。理由は、駅前のスーパーでやっている箱ティッシュのセール終了の時間が近づいているからだそうだ。
せっかく聞こうと思ったのに……仕方がないか、このスーパーなら俺もよく来るし別にもう二度と会えないというわけではなさそうだ。
「それじゃまたね! 稟くん♪」
自分の記憶ではリシアンサスという名前の少女は急いでレジへと向かっていった。なんだかもう少し話したいとは思ったが急いでいるなら仕方がない。
俺もさっさと買い物して帰らなきゃな、あんまり長く悩んでいるとゆっくりする時間無くなってしまいそうだし。
――…
買い物を終えた俺は、両手に買い物袋をぶら下げながら公園の近くをゆっくりと歩いていた。
まぁこれだけ買えばしばらくはスーパーに行かずに済むだろう。
そういえばさっきの女の子はどこに住んでいるのだろう。近くに住んでいるならまた会いたい……
その刹那、俺の耳には美しい歌声が流れ込んできた。声の主はどうやら公園の中にいるようだが、本当にこの世のものとは思えないくらい澄んだ声があたり一面に広がっている。
その歌声に惹かれるまま、俺は公園の中へと歩を進める。見渡す限り子供も一人といない公園のブランコに少女はいた。水色の髪の毛は腰までのび、優雅に歌うその姿はまるで天使のようで、俺は歌が流れている間、目をつぶりながら歌を聞き続けた。
ふと、その歌が止んだかと思うと少女は照れくさそうに俺を見る。耳の長さからどうやら魔族の子らしいが、さっきの神族の子と同様、この辺では見ない顔だ。
「あの……」
「あ、ゴメン。覗いていた訳じゃ無いんだ、近くを通りかかったからつい。それにしても歌上手だね」
俺の言葉にその少女は手をモジモジさせながら照れくさそうに答える。
「そんなこと無いですよ、私より上手な人は沢山いますし……」
「いや、それでも上手だよ。今度機会があったらまた聞かせてもらいたいな」
「……はい、機会があれば」
言い終わると同時にチャイムが鳴り響く。どうやらもう五時になったようだ。その少女もブランコから立ち上がり、お尻についた砂を払った。
「それではまた会えることを楽しみにしています。稟さま」
俺に一礼するとその少女は公園の外へ出て行った。ってあれ? 俺あの子に自己紹介したかな?
何か腑に落ちないまま俺も帰宅することに。
突如会った神族と魔族の二人の少女。彼女たちの正体に気が付くのはすぐそこに迫っていただなどと俺は知る由もなかったんだ。
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