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アーシス 〜the Guardians〜
救出
闇を照らした火柱が収まり始めた頃、鈴と沙夜はそれがどこから立ち上ぼったのか、ある程度の見当がついていた。

「川の西側で、あれだけの能力を使える広さの場所って…」

「運動公園」

「でも、この辺りは道が入り組んでるから、走ってもなかなか着かないわよ」

「なら、屋根の上を行く!」

鈴がそう言うと、2人は近くにある民家の屋根へ飛び乗った。そして、家の屋根を飛び石を渡るかのように走りながら、最短距離で公園を目指した。



運動公園 グランド前

運動公園の一画にあるグランドの入口に着いた鈴と沙夜が目にしたのは、そこでうつ伏せに倒れている近衛の姿と、そのすぐ傍に立つローブを被った人物だった。彼女の服は所々破れ血が滲み、さらに左腕が在るべき場所に無かった。

「沙夜!」

「うん!」

鈴たちは、近衛を救出するため彼女に近付こうとする。だが、グランドに入ろうとした途端、壁ような物の衝突した。目を凝らすと、ドームのような膜が存在していた。

「障壁!?」

「何でこんな場所に…」

彼らは力ずくでそれを突破しようとしたが、不可視の壁は2人を弾き返した。沙夜が掌から魔力を収束
させた魔力弾を放ち、障壁を打ち砕こうとするが、全く微動だにしない。

「退いて沙夜、障壁に穴を開ける!」

「そんなことできるの?こんなに硬いのに」

沙夜が尋ねると鈴は腰に差してある刀、『刹那』を抜く。そして、『刹那』に自らの魔力を流し込んだ瞬間、刃紋が淡い群青色に染まり始めた。

「はあっ!」

振り下ろされた刃が、強固なはずの障壁をいとも容易く切り裂き、突入口を作り出す。すかさず2人はグランドへと飛び込んだ。

「このっ!」

沙夜は空かさず薙刀を構え、通り魔に降り下ろした。

「ちっ…」

寸前でその場から飛び退いた通り魔が、グランドの中央に浮かんでいた小さな透明な物体を掴み走り出した。すると、周囲を覆っていた障壁が消滅する。

「近衛さんは私が手当てするから、鈴はあいつを追って!」

「分かった。近衛さんを頼む」

鈴は、逃走しようとする通り魔を追い始めた。

一方の沙夜は、倒れて動かない近衛に駆け寄った。

「近衛さん、しっかりしてください」

「うっ…沙夜…。思ったより早かったね」

「動かないで下さい!応急措置をしますから」

沙夜は、近衛の左腕を押さえて止血しながら、同時に持っている魔導書を開き治癒魔法を発動した。

「通り魔…?」

「鈴が追ってます」

「死ななければいいけど。あの通り魔、相当訓練されてる動きだった…」

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