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アーシス 〜the Guardians〜
予感
日が暮れ街が暗くなった頃、鈴たちは市役所を出て、街の巡回を始めた。ちなみに、今夜は普段なら自ら動かない静音も参加している。

「沙夜、この辺りに1つ仕掛けよう」

鈴が隣りを歩く沙夜に話し掛けた。

「分かった。でも、今更だけど本当にこれで通り魔が見つかるの?」

「静音さんが構築した、特定の人物を見つけるための魔法だから、確実なはずだけど」

沙夜は、ベルトに吊されたポーチから小さなガラス玉を取り出し、道路にそれを叩き付ける。すると、砕けたガラス玉から橙色の光が溢れ出し、一瞬魔法陣の形を取った後に消えていった。

沙夜が地面に叩き付けたビー玉の中には、静音の魔法が込められていた。仕掛けた場所の周囲を通り魔が通過したら、反応する魔法であるが、同時にそれらの場所を観察することもできる監視カメラのような効果も持ち合わせている。

「どう、ちゃんと発動した?」

「無事に発動してる」

鈴は、手にしている瑞穂市の地図を見せる。地図には、すでに十数個の光点が明滅していたが、さらに1つが加えられた。

「ねぇ、一旦休憩しよう。これだけ仕掛けたんだからら、静音さんも文句は言わないはずでしょ。それに、そろそろお腹空いたし」

「7時半。丁度いい時間だし休憩しようか」

「それなら、この前駅前にできた喫茶店に行こう!あの店、美味しいって評判みたいだから」

そう言うと、沙夜は鈴の手を引っ張りながら駅前の目的地へ走って行った。



数十分後

「近衛さんが行方不明!?」

駅前の喫茶店で、夕食を食べていた鈴の携帯に、藍香から近衛が行方知らずになっているという電話がきた。

『椿山の市役所と家に電話したら両方共いなくて、携帯にも出ないのよ。もしかしたら、通り魔を捜しているかもしれないから、彼女がこの街いるか例の魔法で調べて、できれば迅速に』

「分かりました、すぐに捜します」

『頼んだわよ』

鈴は電話を切り、沙夜に藍香との電話の内容を教えた。テーブルの上を片付けると、彼は懐から街の地図を取り出し広げる。

「沙夜は地図の確認を」

「了解!」

鈴は地図の上に手を翳し、目を閉じて意識を集中すると、2人が街に仕掛けた魔法が発動した。

鈴の脳裏に十数ヵ所の映像が映し出され、その映像の全てを注意深く確認していく。

すると、その中の1つに黒いコートを纏った少女が、誰かを追いながら住宅街の間を走る様子を見つけた。

「見つけた!場所は霧瀬川の西側の住宅街。それに、誰かを追ってる!」

「もしかして通り魔。でも、地図には反応無いわよ」

「えっ!?そんなはずは…」

沙夜の言葉に、鈴は目を開けて地図を覗き込んだ。彼が近衛らしき人物を確認した場所には、確かに魔法が発動している。しかし、地図はその場所に通り魔がいるということを示していなかった。

(魔法に反応しない…まさか!)

考え込んだ鈴の脳裏に、1つの可能性と焦りが過った。

「鈴どうしたの?ちょっと、どうしたのよ!」

突然席から立ち上がった鈴が、店員に代金を渡して店を飛び出した。沙夜も慌てて彼の後を追う。だが、彼女が店を出た時には鈴はすでにかなりの距離が離れていた。

全力疾走してやっと追い付いた沙夜が、一体どうしたのか尋ねた。

「通り魔は、魔力干渉装置を持ってるはず。それを自分を中心に使ったから、仕掛けた魔法に反応しなかったんだ。それに、静音さんが構築した魔法を無力化できる程の効果を、広い範囲に展開されたら…」

「近衛さんは確実に魔法を使えなくなる」

「急ごう、早く近衛さんに追いつかないと」

鈴と沙夜は夜の街を疾走した。

そして、ちょうど霧瀬川に差し掛かろうとした時だった。突如、川の西岸のある場所から、夜闇に突き刺さるように巨大な火柱が立ち上ぼった。

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