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アーシス 〜the Guardians〜
近衛の怒り
翌日 瑞穂高校

授業終了の予鈴と共に、クラスメイトたちは帰り支度を始める中、鈴だけは机に顔を伏せたままだった。



昨夜起きた、椿山市役所魔導対策課への襲撃。その際負傷した2人のアーシスの1人は、椿山市の課長を務める高橋智一だった。2人は瀕死の重傷だったが静音の治療で一命を取り留めた。だが、依然として意識を失っている。

一方、鈴は駆け付けた藍香と椿山の支援に奔走していた。そのため、昨夜は一睡もすることができず、学校にいる時間を睡眠に費やしていた。



「授業終わったわよ」

隣りで帰り支度を整えた沙夜が、授業が終わっても動こうとしない鈴に声を掛けた。

「鈴!!」

まだ起きない鈴に、今度は耳元で叫びながら、その体を大きく揺さぶる。すると、鈴はやっと気付いたのか、怠そうに体を起してあくびをした。

「あれ…授業は?」

「とっくに終わってる。それより、今からどうするの?」

「取り敢えず、市役所に行こうと思う。昨日のことも気になるから」

鈴はそう言いながら、机の中にある教科書などを鞄にしまい始める。帰り支度が済むと、彼の支度を待っていた沙夜と共に教室を出た。



瑞穂市役所

「ふぁ〜」

「ねぇ鈴、今日は帰ったら?昨日徹夜だったんでしょ」

先程から何度もあくびをする鈴を見て、沙夜が心配そうに言う。しかし、彼は「静音さんたちも同じだから…」と言い返した。

「そう…なら、あくびしないでシャキッとする!」

「………さっ…沙夜、今強化魔法を…?」

「えへっ、分かっちゃってた!」

鈴は、叩かれた背中を擦りながら対策課のドアを開けた。すると、静音と面と向かって何か話している近衛の姿が目に映った。

「さっきから何度も言っている通り、犯人の目星が付いていない!」

静音が強い口調で言った。

「なら、何か手掛かりになることを教えて下さい」

静音に尋ねる近衛は、いつもと同じように話している。だが、その声の裏には恐ろしい程の殺気があり、彼女の声を聞いた瞬間鈴と沙夜の背中に寒気が走った。

「それは無理だ。取り敢えず、お前は椿山の市役所に戻って待機していろ、何か分かったらに連絡する」

「分かりました」

「いいな、私が連絡するまで勝手な行動は慎むように」
静音に念を押されるように言われた近衛は、渋々ながら小さな声で「はい…」と言った。そして、踵を返すと入口に立つ鈴と沙夜を無視して部屋から出て行く。

それを見た静音が疲れたように溜め息を吐いた。

「全く、犯人のことを怒っているのは分かるが、今のあいつは犯人を殺しかねないからな…さて待たせたな2人共、県の統括本部から早急に今回の件を処理するように、とお達しが来た」

「やっぱり、高橋課長がやられたからですか?」

鈴が尋ねると、静音は「その通りだ」と答える。

「だが、うちの主戦力である総一郎が特務守護隊の任務で不在。となると、お前たちにはいつも以上に働いてもらうからな。詳しい内容については、藍香が戻ってから話す。それまでに支度を整えておけ」

「「はい!」」

2人は静音の言葉に了解すると、それぞれ支度を始めた。

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