アーシス 〜the Guardians〜
夜半の出来事
瑞穂市 某所
住宅地の一画にある公園。
『分かったいるはずですよ。もし、できなかった際は自身がどうなるかということも…』
「分かっています、必ずやり遂げます」
電話の向こうの相手と話し終えると、通り魔は近くにあるベンチに座り、荒いままの呼吸を整えようとした。
「何で…あいつらが…」
思いもしなかったアーシスの介入。しかもその1人が昨晩重傷を負わせたはずの相手だったことに驚きを隠せなかった。
(何であいつが…魔法を使ったとしてもあの怪我だと、まともに動けないはず)
彼はそう思いながら、被っていたローブのフードを脱ぐ。すると、下から現れたのは鈴たちと同じ年ぐらいの少年の顔だった。
「まずいな…」
彼は息が落ち着くのを待ってベンチから立ち上がると、覚悟を決めてある場所へと足を進めた。
瑞穂市役所
もうすぐ、日付も変わろうとしている深夜。瑞穂市魔導対策課で、夜警から戻った鈴と彼に同行した高須兄妹が夜勤中の静音に、
「それで、お前たちは通り魔には逃げられたのか?」
「「「すみません…」」」
通り魔を取り逃がしたことについて、3人揃って叱責を受けていた。彼らは、自分たちの落度を的確に指摘され、一切の反論もできずに俯いている。
「全く、アーシスが3人いる状況で通り魔を逃がすとは…お前たちは今以上に訓練が必要だな」
「「「はい…」」」
「それで話は変わるが鈴、さっき通り魔の手掛かりを見つけたと言っていたが、一体何を見つけたんだ?」
静音が鈴に尋ねると、彼は先程拾った物をポケットから取り出した。
「これは…バッチか?」
彼女はそれを手に取り、そこに描かれているレリーフを眺める。すると、微かに口元を歪めて笑った。
「ほう、犯人がこれを落としたと?」
「信じられませんことですけど…」
「いや、可能性としては0%ではない。だが、これは面倒だな。マスコミが知ったら、すぐに食い付きそうなネタだ」
そう呟きながら、静音は机を開けると、瑞穂高校のシンボルマークが描かれた校章を中にしまった。
そして、鈴に「あまり深く考えるな」と告げると、机の上に置かれている缶ビールを手にする。
「な
ぁ高須兄妹、お前たちここにいてもいいのか?何も言わずに家を飛び出して来たんだろう?」
静音は、ビールを口にしながら昴と茜に尋ねた。
「あっそう言われれば、もう2時間になっちまったな」
「兄様、そろそろ帰りましょう。皆さん心配しているはずです」
「だな。俺たちはもう帰らせてもらいます。鈴、また明日な」
「お先に失礼します」
高須兄妹は、静音と鈴にそう言うと部屋を出ようとする。だが、それを引き止めるかのように、今まで静かだった電話が突然鳴り始めた。
「んっ、一体誰だこんな時間に?」
ビール缶を置いた静音が、面倒そうに受話器を取り電話に出る。
するとその数秒後、夜の静寂を破るように突然声を張り上げた。その尋常ではない様子に、昴と茜そして鈴が彼女に注目する。
「分かった、すぐに向かう」
彼女は話を終えるなり、受話器を乱暴に戻して机から魔導書や杖なりを取り出すと、近くにある鞄にそれらを放り込んだ。
「静音さん、何かあったんですか?」
鈴が心配そうに尋ねる。すると、静音の口からその場にいる3人が驚くような言葉が発せられた。
「椿山の対策課が、何者かに襲われた」
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