[通常モード] [URL送信]

アーシス 〜the Guardians〜
ユイ・アマギ
「ここは、僕たちで何とかします。早く下がって下さい」

「すまない、頼む」

鈴と沙夜は、身の丈以上の巨大な鎌を構える少女と対峙した。

「あはっ、やっと強そうなのが来た」

「今すぐ、武器を捨てろ!」

「嫌だよ!それより私と勝負しない?」

そう言うと、ユイの手にしている鎌の刀身が見る間に変形し、その姿を槍に変えた。そして次の瞬間、彼女は目にも止まらぬ早さで2人の背後に回り込んだ。

「ちょっと、寝ててね」

その言葉と共に、ユイは手にする槍の柄で沙夜の首筋を叩いた。沙夜がか細い呻き声を漏らして、その場に崩れ落ちる。

鈴は、倒れる沙夜を抱き留め気絶していることに気付くと、一瞬安堵の表情を浮かべた。そして、沙夜を身体に通路の壁にもたれ掛からせると、ユイの方に向き直り彼女を睨む。

「さてと、これで邪魔者はいなくなったね。私の名前はユイ・アマギ、よろしく式嶋レイ君!」

彼女は自分の名を名乗り、鈴に一礼をした。

「よくも沙夜を…それに何で僕の名前を…」

「そんなこと気にしない、気にしない。それじゃ行くよ♪」

その途端、彼女は槍を構えて鈴に肉薄する。そして、彼に向かって連続で突きを放った。

鈴は必死に刀で槍bッ止めるので精一杯だった。

「ねぇ、それ本気?期待外れなんだけど」

「なら、これはどうだ!」

「あれっ?」

すると、鈴の脚払いがユイの脚を捉え、バランス崩した彼女は床に倒れ込んだ。それを見るなり、鈴の左手に群青色に輝く魔法陣が出現する。

「貫け ―フレアソード」

言葉と共に、鈴の掌から無数の炎でできた剣が放たれた。ユイは、床を転がって避けるがその内の1本が彼女のサイドポニーを焼き切る。

「私の髪…もう何するのよ!」

「怒るべき違うような気がするんだけど…」

「何言ってんのよ!髪は女の命!」

彼女は怒りを顕にすると、ポケットから、小さな透明の正六面体を取り出す。すると、正六面体が高速で回転を始め、そこを中心に一瞬魔法陣が広がり消えた。

「もう、少し本気になっちゃうから!」

ユイがそう言って槍を振った瞬間、彼女の持つ槍の先端が外れ、ワイヤーの先に付いた穂先が彼に飛来する。避けようとするが、鈴の右腕に突き刺さった。

「先が外れた!?」「あはっ、命中♪いいでしょ〜形状変化魔導槍『キュルトス』。鎌に変化させたり、今みたいに先を飛ばすこともできるんだよね」

ユイは自慢に言いながら、鈴の腕に刺さっている槍の穂先を引き抜き、再び槍の柄と合体させた。傷口からは、血が腕を伝い床に滴る。

「でも、このくらいの傷ならすぐ治せる」

「さぁ、それはどうだろうね?」

鈴が傷口に当てた左手に魔力を集中させる。だが、治癒魔法は発動しなかった。鈴は、やっとユイの言葉の意味を理解して、彼女の横で浮遊しながら回転する正六面体を睨んだ。

「魔力干渉装置。でも、あんなに小型な物は、まだ開発されてないはず」

「ここに来る前に、博士から貰ったの。でも、これで魔法を使った攻撃や回復はできないでしょ」

「それは、そっちも同じ条件だろ。むしろ、覚醒魔法で能力を使える、僕の方が有利になる」

鈴は、左手で取り落とした刀を拾う。そして、深呼吸をすると自分を取り巻く空気に意識を集中させる。すると、大気中の水蒸気が凝固、液体になり鈴の右腕に収束して、水の盾を形成した。

「水を操る能力か〜それなら、私も能力使っちゃおうかな!」

「能力を使うって…覚醒魔法の術式を知っているのは、この国とイーベルクの少数の魔法使いだけのはず。お前みたいな奴が使えるわけは…」

「それが使えちゃうんだよね〜」

ユイがそう言った途端、彼女の周囲の空気がキラキラと光り始めた。

[*前へ][次へ#]

6/15ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!