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アーシス 〜the Guardians〜
賑やかな家
「あら、2人共お帰り。でも、今日は夜勤の日じゃないの?」

鈴と沙夜が玄関を開けると、その音に気付いた、母親の彩子(あやこ)が家の奥から姿を現す。

「ただいま母さん。そうだ、明日沙夜と2人で東京に行くことになったから」

鈴が明日の予定を何気なく言った途端彩子は、

「えっ、もしかして2人だけで旅行!そうなの沙夜ちゃん!?」

と少し驚きながら沙夜に尋ねた。

「りょ、旅行じゃありませんよ!『施設の方に行ってくれ』って、静音さんに頼まれたんです!」

沙夜は慌てて言うと、顔を真っ赤にしながらその場から逃げるようにして、2階にある自分の部屋に向かった。

「沙夜の奴、どうしたんだ?」

「はぁ〜、やっぱりレイさんの息子だけあるわね〜」

「母さん、それってどういうこと?」

「鈍感で朴念仁ってことよ!」

そう言うと、夕食の支度の真っ最中だったのか、彼女は急ぎ足に台所へ戻って行った。

一方の鈴は、自分の部屋に戻り制服を脱ぎ捨てると、私服に着替えて居間へ向かった。すると、そこには鈴よりも先に帰っていた瑶子が雑誌を読みながら、くつろいでいた。

「あっお帰り。ねぇ、明日沙夜ちゃんと東京に行くって母さんからきいたんだけど、本当なの?」

「別に、行きたくもないけどね」

「でも、それって沙夜ちゃんと一緒に寝るってことでしょ」

「たぶん、そうだね」

「襲っちゃダメよ」

その瞬間、鈴は飲んでいたお茶を噴き出し、噎せ返ったが、それが収まると共に瑶子に向かって「襲うわけあるか!!」と叫んだ。

「沙夜ちゃんに注意するように言わなきゃ」

「だから、何もしないって!」

「でも、沙夜ちゃんって可愛いじゃない」

「だから、何もしないから!!」

「も〜無理して否定しなくてもいいのに。鈴も健全な思春期真っ只中の男の子なんだから」

その一言に鈴は、溜め息をついてもう好きにしてくれと、テーブルに顔を伏せた。それを見た瑶子は、ガッツポーズをする。

その時、落ち着いたのか私服に着替えた沙夜が、居間の扉を開けて入って来た。

「あれ、鈴どうしたの顔伏せちゃって」

「ねぇ沙夜ちゃん、鈴が沙夜ちゃんを襲うって言ってたわよ」

「ねっ姉さん!」

その途端、居間全体が恐ろしい程の静寂に包まれる。そして、顔を再び真っ赤にした少女が少年の方を振り向いた。

満面の笑みだった。それ故にとても恐ろしかった。

「鈴〜一体何考えてるのよ!!」

「ちっ、違う!沙夜話を…」

「問答無用!」

一瞬の静寂を破って、居間から悲鳴と笑い声が響き渡った。

それを台所で聞いていた彩子は、「仲がいいわね〜」と呟いた。

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