アーシス 〜the Guardians〜 静音の頼み 「…はい、分かりました。すぐに行きます」 「ねぇ、静音さん何だって?」 電話を切った彼に、沙夜が話していた内容を尋ねた。すると、鈴は溜め息をつき何も言わずに自分の部屋へと階段を上がった行く。そして、再び鈴が沙夜の前に姿を現した時、彼は普段着の上に黒いコートを身に着けていた。 「コートなんて着て、何かあったの?」 「ちょっとした用事だよ。沙夜は来たくなければいいってさ」 「鈴、待って!私も行くから」 彼女は慌てて自分の部屋からコートを持ち出して来た。 「本当にいいのか?」 「1人で留守番は、かなり暇だからよ。さあ、静音さんを待たせたらいけないし、早く行こう!」 沙夜に手を引かれた鈴は、彼女と2人で市役所で待っている課長の元へ向かうことにした。 「静音さん、おはようございます!」 沙夜は、病み上がりとは思えないいつもどうりの様子で、対策課のドアを開けて部屋に入った。 「病み上がりだから、来なくてもよかったんだぞ。それで、沙夜…鈴の姿が見えないのだが?」 「あぁ、鈴なら玄関で雪乃さんと会っちゃって…」 「少し話している…だろ」 溜め息をついた静音は、自分の机の引き出しから幾つか封筒を取り出し、「鈴は、まだ来れそうにないな」と呟きながらそれを沙夜に渡す。 沙夜が封筒の中身を確認すると、中には1冊のファイルが入れられていた。 「そのファイルの論文を、月曜日に学会で発表するのだが、見ての通り全く進んでいない。だから、清書の作業を手伝ってくれ」 「こんなにですか!?軽く100枚以上ですよ!」 沙夜は悲鳴を上げ、静音に文句を言った。 しかし、静音が一言「8割以上やったら報酬を出す」と説得すると、彼女は少し間を置いて無言で自分の机に着き、各自の机に備え付けられているパソコンで早速作業を開始する。 数分後、少し疲れた様子で鈴が課にやって来て、自分の机に倒れ込む。だが、 「来たか。早速だが、私の代わりに見舞いに行ってくれ」 そんな様子を無視して静音は彼に要件を伝えた。 「誰の見舞いですか?」 「藍香に決まっているだろう、見舞いに持って物はその棚の上に置いてあるからな」 そう言うと、静音は論文の作業に追われているため、目で棚の方向を指した。 鈴は、その棚の上に置いている花束と紙袋を持つと、市役所から少し離れた病院へと向かった。 [*前へ][次へ#] |