アーシス 〜the Guardians〜
沙夜
市役所の建物を出た鈴は、一路自分の家に向かうことにした。式嶋家は、市役所や駅などのある霧瀬川東岸地区、城ヶ丘(じょうがおか)と呼ばれる小高い丘の斜面に造られた住宅街の一画にある。
玄関の鍵を開けて、家の中に入ると台所から誰かが料理をする音が聞こえた。鈴は、2階の自分の部屋に入り、制服を脱ぎ捨て私服に着替える。そして、台所へ行くとロングヘアの少女が朝食の支度をしているのを見つけた。
「おはよう」
「あれ、帰ってたの?」
「今、帰ったところ。それより、よくこの時間に起きたな」
「自然に目が覚めてね。鈴、朝ご飯できたからテーブルに運んで」
鈴は「分かった」と言って、2人分の朝食をテーブルに運んだ。
鈴と沙夜は、アーシスの訓練課程で知り合い半年前、共にこの瑞穂市への配属が決定した。しかし、本来なら沙夜は他の県に配属されるはずだったが、とある理由で瑞穂市に配属が変更され現在は式嶋家に居候している。
「そう言えば、昨日は疲れたでしょ。お疲れ様」
「えっ、別に疲れるようなことは無かったけど」
朝食の最中、突然礼を言われた鈴は沙夜がどうしてそんなことを言っているのか分からなかった。すると、彼女はテーブルの上に置かれた今朝の朝刊を開き、ある面を鈴に見る。
「ほら、この“瑞穂市でコンビニ強盗捕まる”って記事よ!これに書かれているアーシスって、鈴のことでしょ」
「あれか!でも、よく新聞に載ったな」
「地方の新聞だからね、書くことが無かったんじゃない?」
「確かに、全国的にも大きな事件も無くて平和だからな」
そう言って納得すると、彼は再び朝食を食べ始めた。
そして、朝食を食べ終えると2人は協力して食器や料理に使ったフライパンなどを洗い、それが終わると彼は椅子に座りテレビを見始める。しかし、この時間は朝のニュースばかりで特に見たい番組が無かったので、2階の自分の部屋に戻ることにした。
「やっぱり、少し寝足りないような気がするな」
彼は、大きなあくびをすると、少しの間寝ることしてベットに倒れ込んだ。すると、その直後から意識が朦朧とし始め、自身が寝たことに気付く前には寝息を立てて熟睡していた。
しかし、
「鈴、静音さんから電話きてるわよ!」
5分もせずに、静音からの電話で起こされ、彼は怠そうに電話の元へと階段を降りて行った。
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