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守護の鬼〜strange bloods〜
本題...
湯飲みから溢れたお湯は氷柱の指先を侵食していた。
ネコ舌といい、今のお湯がかかった時の反応は、鉄の斧を一瞬で溶かしてしまう程の炎を自在に操る者とは、到底思い難い。

「はぁ……相変わらずなんだねぇ……」

「あつつつ……」

氷柱は涙目になってフゥ〜フゥ〜とお湯のかかった指を吹いている。

「はぁ…はぁ…、それで…俺達に何をしろと?」

氷柱は、涙を指で拭いながら環に聞く。

「うん……そうだねぇ……じゃ、みんな呼んでよ」

「あんたが退かしたんじゃねぇの」

「あ〜ゴメンゴメン。氷柱くんに話があるのは、解放率の事だけだったっけ」

環は頭にポコンッと可愛らしく手を乗っけた。
これを見てると氷柱の上官だとはとても思い難い。
それどころか、年上だと言うことでさえも疑わしくなってしまいそうだ。

「ったく……頼りない上官だな」

「ん〜?なんか言った?」

環は明らかに気づいているのだろうが、敢えて聞いているようでニコニコしている。
氷柱はそれを見て、クシャっと前髪をかきわけて、額に手を当てながら言った。

「はぁ、ちょっと待ってて下さいよ」

氷柱はそう言って部屋から出ていった。

「………はぁ、疲れた」

氷柱が出て行った事を確認すると、環はテーブルを立ち、キッチンへ置きっ放しになっていた湯飲みを掴み、それに入っていた紅茶を再び一気に飲み干す。
そして、キッチンに設置されている調理場の反対側、つまり環の背後にある食器棚に背中を預けた。
そして、腕を組んだ環は大きく息をはいて、目を伏せて言った。

「悪く思わないでよね」

.....................................。

部屋には黒川町の守護棟の守護士、たった6名が集まっていた。

沙奈を除いて、スムーズに集まった。
沙奈はというと、部屋で寝ていたため、それを起こそうとした氷柱は額を割る程の頭突きをくらわされ、そこへ戦闘体術に価する膝打ちを腹へ見事に貰い受けていた。

「それで、環さんは僕達に仕事を頼みに来た、という事でよろしいのですか?」

「ってあれ?俺はスルー?」

そこでの蛍はダメージが抜け切らずに、顔を青くして部屋の隅でうずくまっている氷柱に目もくれずに、本題へと移った。

(ま、いいんだけどね、どうせ俺はこういうポジションだからさ)

「さすがは環さんとでも言いますか。手が早いのですね。フフフ」

「大丈夫?蛍?行けそう?」

イエスと答えてくれるのが当たり前、と言うような感じで環はニッコリと蛍を見つめている。

「ヒャハッ、上官は勝手が多いんだな」

テーブルから少し離れた場所でイスの後部の日本の足で上手くバランスをとって、前後に揺らしている烈火から声がかかった。
そして、ガタンッと足を落としてイスの動きを止める。
そして、下を向いて裂けるような笑みを浮かべる。
その表情から除く妙に白い歯の輝きが強く自己主張をしていた。

環は混血率が守護士最大の59%である。
その元となる奇神は『竜』。つまり、環は烈火と同じく、竜の子なのである。

しかし同じ竜の子でも、混血率が最大のはずの環より、烈火の方が遥かに竜らしい目と表情をしていた。


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あきゅろす。
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