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守護の鬼〜strange bloods〜
衝撃...
氷柱聖は歩いていた。
時間は夜。
雲一つない快晴のおかげで、いつもより多くの星が夜空に瞬いていた。
無風だが、たまに吹き抜ける風が気持ち良く感じられた。

「ふぅ……どうすっかな」

氷柱は自販機のボタンを押した。
ガタンッ
と金属の痛々しい音がしてソーダ飲料の缶が吐き出される。

「う〜ん……あのままでもいけたかも」

カシュッ
とプルタブを持ち上げ、密閉された缶から空気が溢れる音が大きく感じられた。
氷柱聖はグイッと首をはり、一息にソーダ飲料を飲みほした。

「さて、徳川家康、家忠、家光、家綱、……ウゲェ……無理だ。炭酸飲んでゲップせずに代々徳川将軍の名前言うのなんて」

氷柱は通り過ぎて、背後にあるゴミ箱を見向きもせずに手首だけを使い、缶を投げた。

「ありゃ」

しかし、無惨にも数多くのアルミやスチールが当たる音はしなかった。
カツンッ
と一つの金属音が虚しく響く。夜の為か、その音がやけに大きく感じられた。

(――いっ?!)

氷柱を髪が逆立つような感覚が襲った。
その感覚は一秒ごとに大きくなってゆく。

「な〜氷柱………かっこわり…プクク」

カツッ
と靴の音がして、暗闇からやっとその声の主が確認できた。
氷柱と同じ身長程の、フードを被ったシルエット、根津烈火だった。

「……げ」

氷柱から、空気を吐き出すついでに出てしまったような、短い声が勝手に漏れる。
氷柱の顔が物凄い速度で熱をおびてゆく。

「ヒーアッハッハ、腹いてぇ………おうぁ!」

その烈火は転がってきた、氷柱の投げた空き缶を踏んで、足が空中に投げ出され、後頭部にアスファルトの感覚が襲いかかった。

「ぐあぁ……死ぬ……があぁ」

氷柱は、フン、ざまあみろと言う感じで烈火に冷たい視線を送る。

「テ、テメェ………ん?」

氷柱に怨みのこもった視線をぶつけた氷柱だったが、何かを見つけたかのように視線を、星が瞬く虚空の夜空にもどす。
そしで目でパチパチと早めにまばたきをする。

「どうした?烈火――!」

夜空を見上げた氷柱は恐ろしい物を見た。
氷柱の表情が一瞬で恐怖のものへと変化した。

「烈火!逃げだ!!」

「言われなくても!」

烈火は倒れた体を腕と腰の力だけで起き上がらせ、すぐさま地面を蹴る。

そして、二人は物陰に隠れ、それが襲いかかるのを待つ。

「耳ふさげ」

「おう」

二人は手榴弾を投げた兵士のように人差し指を耳栓の変わりにし、歯をくいしばって目を瞑る。

「………うぉあ!」

「………い!?」

衝撃が二人を襲った。
地面が激しく揺れる。
その揺れによって二人の両足が浮いてしまうほどまでに。
また、人差し指の耳栓もほとんど役に立つ事はなく、それを通り抜けた音は二人の鼓膜を強く振動する。

「っつぅ〜〜」

氷柱は苦虫を噛んだかのように、眉間にしわを寄せて、奥歯を強く噛み締める。

「大丈夫かぁ〜」

しかし烈火には大したダメージはなかったようで、その衝撃の震源地へと向かって駆けてゆく。

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