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守護の鬼〜strange bloods〜
鬼化...


「これをやるとさぁ、上がいろいろとウザイわけよ。でも状況上、そうも言ってられなくなっちまったワケだわ」

そう言っている氷柱の右目が蒼く染まっていた。
氷柱の炎と同じ色だった。

「目だけだろ?キヒッおもしれぇ!」

ミノタウロスは横に大きく裂けるような笑みを浮かべ、乾いた声を出した瞬間、氷柱の方向へと引き返した。

「立つんじゃなかったな!そんなに死にてぇなら、苦しんで死ね!」

ミノタウロスは一瞬で氷柱の懐に入り込み胴を目がけて斧を一閃。


なのに音がしなかった。
いや、何かが斬れたり当たったというような音がしなかった。
ポトリ、ポトリという滴り落ちるような音がしている。

「な……」

ミノタウロスは目を疑った。
斧の刀身の部分が無くなり、柄だけになってしまっていたのだ。
柄の先はどこか焦げているように見える。

「は」

ミノタウロスは息を吐くように背後に立っている氷柱を見る。
見ると、全く動いていない。なのに無傷だった。

体は全く変わっていない。変わっているのは炎だった。
見れば炎が氷柱の身体を包んでいる。
そして氷柱の足元には金属が溶けたような赤黒い物体が流れていた。

ミノタウロスは言葉も出ない。
幾度となく鬼の子と呼ばれる者には出会った。
その中に何人かは体を炎で囲める者がいた。
だが、その炎をミノタウロスの斧は貫いてきた。
だが、炎に触れただけで、ただほんの一瞬触れただけで鉄を溶かしてしまう者など見た事も、聞いたこともなかった。

「ひっ……はぁ」

ミノタウロスの喉が一気に干上がった。
恐怖のあまりか膝が思ったように動かない。
距離を取るように走る。それが今のミノタウロスにできる精一杯の行為だった

「悪かったな。でもコレを使っちまぇば、カタがつくんだ」

ビキビキッと骨が変形するような痛々しい音をたて、氷柱の右腕の皮膚が破れ、赤褐色の皮膚が露になる。

「鬼化≠ヘコレで終わりじゃあないが、これだけで充分だろ」

「はっはぁ」

既にミノタウロスに戦意はなかった。逃げる事だけを考えていた。
空間の流れを読み、切り裂く。そして四次元空間で移動する。

「よしっ」

空間が裂けた。
それまでの時間、一秒とかかっていない。
氷柱との距離はかなり広がっていた。

「ばっ」

バカな!
と言おうとしたが、最初の一文字で氷柱の右腕がミノタウロスの胴を捉えた。
ミノタウロスは地面から遠く離れてしまう。

「終わりだな」

一瞬だった。
地面に叩きつけられたミノタウロスは意識を喪失した。

「……っと」

氷柱はヨロリとゆらめいた。

「めまいがする……血を流し過ぎたみたいだ」

ふぅ……
と一息ついて、氷柱は木に背中を立掛けて休みようにしゃがみこんだ。

「あ〜疲れた」

その時聞こえた聞き慣れた声。

「だ〜い〜じょ〜ぶ〜?氷柱〜?」

沙奈の声だ。
それに続き、守護棟のメンバーが姿を現した。

「あぁ……無事だぁ」

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