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守護の鬼〜strange bloods〜
氷柱...




「ちっくしょ……」

氷柱は自分でも想像していなかった事態に陥っていた。
ミノタウロスの体力が一向に衰えない。その体術も前回と異なり、威力、速度に置いて氷柱と互角か、それを上回っていた。

現に氷柱の主要武器である日本刀と大斧はミノタウロスの斬撃によって砕かれてしまった。
今の氷柱の武器は両手に逆手で持った、二本の小刀。
それを伝って滴る血液。
服の裂け傷。
体のいたるところにある内出血により青黒く染まったヶ所。

これを見れば誰だって、明らかにミノタウロスが優勢だと理解できてしまう。

(はぁ……っなぜだ?分身はまだ倒されないのか!)

突如、素晴らしい速度で加速し、氷柱との距離を狭めたミノタウロスの斧が氷柱の頭上から振り下ろされた。
氷柱はそれを紙一重で避け、後退する。

トンッ
と、氷柱の背後に何かが当たった。
なんだろう、そう思って氷柱が振り返る前に、

「なぁ……仲間が分身を倒すのを期待してんじゃないよなぁ?!」

背後から聞こえるミノタウロスの声。ミノタウロスが速くなったのではない。氷柱が遅くなってしまったのだ。

「それ、期待しても無駄だぜぇ……キヒッ」

「お前の分身なんかにアイツらがやられる訳が……」

「そうじゃないんだよねぇ……倒しても無駄なの」

氷柱には何の事だか全く理解ができなかった。
データブックには本体はたいした力も持たず、最後の分身を倒せば力がなくなるハズだ。

「それ、間違いだから」

ミノタウロスが人前に姿を現すのは稀だ。
そのほとんどが血の暴走ではなく、消費した力を補充するための人間を喰いに来るためだ。
つまりデータブックに載っていたのは、力を消費して本来の力を失っていた時の能力だったのだ。

「つまり?コレが本来の俺の力なの」

分身は単なる足止めの道具。
本来のミノタウロスは分身にも力を費やすが、それで使い切り、分身が倒されれば終わりという軟弱なものではない。
むしろ分身は自身の力の5割も消費していなかった。

「あ〜あ……つまんないな……他の壊そ」

ミノタウロスはそう言って針のように堅い短いナイフを氷柱の首に突き付けた。

「バイバイ」

そしてそれを軽く一閃。
人間の皮膚などそれで充分だ。
氷柱の首から血が吹き出す。
頚動脈は避けたようだったが、それでもかなりの出血量だった。

「ぐぁ」

氷柱は小さな声をあげて、その場に崩れた。

「はぁ……ま、トドメは刺さなくても、そのままにしとけば死んじゃうし?や〜めた。」

ミノタウロスはそう言ってどこかに向かおうとした。





が、その時、何かがミノタウロスを呼び止めた。
氷柱ではない……
そう思ったミノタウロスは振り返る。しかし、そこに立っていたのは氷柱だった。
倒れる前とは別人の用に低く、強い声だった。

「な……に?」

「待てと言った。それだけだ」

出血量は変わらない。立てるハズはない。鬼の子の再生力と言えど、この短時間で再生はできない。
なのに、なにもダメージが無かったかのように立ってている。

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あきゅろす。
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