守護の鬼〜strange bloods〜
二丁拳銃....
ニールは、すぅ〜っと一息。
胸を反らして大きく深呼吸をした。
そして、肺の奥深くの隅々まで空気を送り込んだニールは反らした体を戻して、強い眼光を分身ミノタウロスへとぶつける。
剛!!
と空気を切り裂く音が林の間をすり抜け、辺りに響く。
風を纏ったニールの一歩一歩が森林の土を深くえぐってゆき、普通の人間では尋常でない程の速さで分身ミノタウロスとの距離を狭める。
しかし分身ミノタウロスは臆することなく、一歩として動かず正面から向かえうとうとするー
「ニ丁拳銃(ツインズガン)?……はっザコか!」
その時、ニールの顔は髪に隠れていて表情は定かではなかったが、口元を見る限り笑っているかのように思えた。
「なら、受けてみたらどうだ?」
衝撃に耐えきれずに、ただでさえ破壊されている地面を、ニールはもう一段階強く踏みしめた。
その衝撃で無数の岩が弾け飛んだ。
そして放つ。
「超暴風砲!!」
ニールの持つ二つの銃口から、渦巻く風が吐き出される。
思いの他、音は静かだった。
いや、音は普通のピストル程の耳を刺すような音だった。音ははっきりとしていたのだ。
しかし、音よりも速い速度で圧縮された風の弾は目標へ届いていた。
ドンッ!
弾は分身ミノタウロスに直撃……はせず、それの頬をかすめて背後に広がる森林へ吸い込まれていった。
分身ミノタウロスは一歩も動けなかった。彼の動体視力を上回る速度の風弾だった。
分身ミノタウロスは驚きを隠せないように、音のした方向へと顔をうつす。
弾は確かに2本の木の幹をものの見事に貫いていた。
しかし、幹を撃ち抜くなど、守護士であれば容易に可能なことだ。
問題なのは、その幹の傷の形だった。
弾が当たった場所は、綺麗にその弾の大きさだけくり抜かれていた。
その穴の回りは何事もなかったかの用に無傷だった。
「……今はわざと外したが…次はない」
「バカな……拳銃使いでそんな威力があるハズが……」
守護士の拳銃使いというのは、平均的な守護士よりもひときわ、風技の威力が乏しい者が多い。
そのため、その少ない威力を補う為に、銃を持つのだ。
たとえ、弱い風だとしても、銃口の大きさに圧縮して撃ち出せば、その圧力ははかりしれない。
しかし、ニールの風技の力は並どころか、上の部類だ。
氷柱の風技が並程度。ニールの風力は、その倍程だった。
ただ、強い風を圧縮して銃で撃ち出すのには問題があった。
圧縮して放てば、それ相応の反動が自分にもはねかえってくるため、その反動で狙いがズレ、命中率が限りなく下がってしまう。
つまり、通常で考えれば、拳銃は弱い者の特権なのだ。
しかし、ニールはその反動に関係なく、風の拳銃を操る事ができる。
数多い守護士人口の中でも、風技の威力がトップクラスでの銃使いは7人しか存在しない。
ニールはその一人だった。
「さてと……終わらるかな」
ニールは、それを言い終わらないうちに左手に持った銃の引金を引いた。
分身ミノタウロスは動けずに、脳天へと風弾を受け入れた。
分身ミノタウロスの全身を痛みが駆け巡る前に、分身ミノタウロスは消滅した。
「痛くはなかったハズだ……」
ニールは分身ミノタウロスが消滅した場所を2秒程眺めて振り返った。
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