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その男、山井彰(仮)
〜ありふれた日常の中で〜
その日はあいにくの雨となっていた。僕は、その雨の中、傘をささずにその場所に立っていた。彼女との約束を果たすために。永遠とも思える時間の中で待っていたのだ。
「ごめ〜ん。山井待ったよね・・・ってどーして傘差さないで突っ立っているのよ!」
確かに家から出るときは晴れていた。しかし、だんだんと雲行きが怪しくなっていきそして、雨が降り出したのだ。僕に落ち度があるとは思えない。
「山井・・・天気予報見たの?」
天気予報は、しっかりと見てきたさ。降水確率80パーセント。20パーセントは、晴れる予報だろう。それなら俺は、残りの20パーセントに賭ける。
「本当に・・・バカだよね。はい、タオル貸してあげる。」
「ありがとうございます。しかし、なぜタオルなんて持っているのですか。」
「あんたのことだから。もしかしたらと思ってね。」
鳴瀬の思いがけない一言。そうか・・・彼女は、俺のことをこんなに気にかけてくれていたか。心の中でつぶやいた一言は、現実の声として現れていた。
「私のことをそんなに気にかけてくれていたのですね。」
「そっ、そんなことないわよ。」
と、まあ。こんな感じで話が進めば面白いほどのラブストーリーになるのだろう。しかし、この物語でそんな期待をしても困るというものだ。現実は、それほど単純には構築されてなどないのだよエジソン君。フェルマーが最終定理を解いたからといっても凡人が創造したことが現実になることは、ほとんどないだろう。そう、現実とは、いかに平凡極まりないのだろうか。確かにテレビの特番では、超能力者が透視したとか、霊と会話できるなんて人がいるつーことが放送されていて、俺にもそんな能力があるのではなんてことも考えていた時期もあった。しかし、いくら願ったって天気を自在に操ることはできない。当然だ。願うくらいで叶うなら、今頃俺は、世界を統一できているだろう。まぁ、そういうことで当日の天気は、天晴れなほどの晴天だ。どこかに天候を操作できるカエル型の地球外生命体でもいないのかと探してみたほうがいいのだろうか。そんなことを考えていると、とっくに約束の時間が過ぎていた。

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