恋時雨の降るとき 最終話 「終焉」 数日後、椿は悟史のお墓の前にいた。 長く降り続いた雨は上がり、太陽が地を照らしている。 あの日、お婆ちゃんが最後に言った言葉は『惑わされるな』だった。 そう、お婆ちゃんは始めから全てわかっていた。 雨憑之神なんていないことを。 想いが人を惑わしているだけだったことを。 もっと早く知っていれば、千里も救ってやれたかもしれない。 悟史も死なずに済んだのかもしれない。 「泣いていたら…また怒られちゃうね」 椿はそっと花を添えた。 後悔しても死んだものは返らないのだから… 「また…来るからね」 椿は立ち上がった。 空を見上げる。 明るい日差しが眩しい。 少し冷たくなった風が髪を靡かせる。 天にいる貴方へ届きますように… 「ありがとう…そして、さよなら…」 [前へ][次へ] [戻る] |