Sae's Bible
お店番しましょう!
「そういえばタケシミアは依頼あったのか?」
「ううん、残念だけど無かったよ。」
「そうか…じゃあタケシミアは昼御飯と晩御飯の買い出しに行ってくれるかな?サエはお兄ちゃんと一緒に店番しようっ!!」
「やだ。お兄ちゃんベタベタ引っ付いてくるから。店番くらい一人でできるよ。」
「でも姉さん気をつけてよ、じゃあ今から市場に出かけてくるよ。」
タケシミアは買い物カゴを持って出かけて行った。
カズヒルムはサエに断られて、しょんぼりしている。
「ほら、お兄ちゃん!!店番するから薬でも作ってなよ!!」
「わかったよ…じゃあ私は2階で在庫品を調合するけど、なんかあったら絶対呼ぶんだよ!!
特に変なおじさんの客とか若い男の子とか来たら、絶対呼ぶんだよ!!」
しつこいくらい言うとカズヒルムは2階に上がっていった。
やっと店の中が静かになり、後はお客さんがやって来るのを待つだけ。
サエはカウンター前の丸椅子に腰掛けた。
「ふぁ〜、そういやまた朝ご飯食べてないや…まぁいっか。」
朝…と言うには少し遅いが、サエとカズヒルムはいつも朝ご飯を食べない。
起きるのが遅いので、タケシミアが作る朝ご飯に間に合わないのだ。
サエがぼーっと天井を見ていると、カランカランとお店の扉が開いた。
「あら、今日はサエちゃんなのねぇ。」
入って来たのは常連のセルおばちゃんだった。
「セルおばちゃんやん。今日は何がいるん?」
「実はお漬け物切らしてねぇ。
サラ尾漬けを5袋欲しいんだけど。」
「はいはぁい。ちょい待ってなぁ。」
サラ尾漬けとはサラマンダーの尾の漬け物の略で、近所の人がよく使う言葉だ。
サエは漬け物専用の棚から小分けされたサラ尾漬けを5袋取り出し、店の紙袋に入れた。
次に慣れた手つきでレジ打ちをする。
「えーと、お会計1500リールやで。」
「あらぁまけてくれないの?タケシミア君の時は300リールもまけてくれたのに。」
「はいはい、んじゃ1200リールでええよ。」
「ありがと〜!!それじゃ、また来るわね。」
紙袋を持ってセルおばちゃんはうれしそうに出ていった。
「はぁ〜、あのおばちゃんはまけてあげんとしつこいからなぁ〜。」
サエが一人でブツブツ言っているとまたお客さんが来た。
パン屋さんとこの看板娘で評判のシンシアだ。
「あら、サエちゃんじゃない。こんにちは。」
「シンシアさん、こんにちは!」
「ふふふ、元気ね。今日はお薬を買いに来たの。」
「はい!何を買うんですかぁ?」
「えっと…ヒーリングXとファインダマジックを2つずつ頂きたいの。」
「はいはぁい。」
薬棚の鍵を開けてヒーリングXとファインダマジックを2瓶ずつ取り出す。
するとファインダマジックの在庫が無くなってしまった。
サエはとりあえず商品を紙袋に入れてレジ打ちをする。
「えっと、1400リールになります。」
「はい、ありがとう。」
シンシアから代金を貰ってレシートを渡す。
「あ、シンシアさん。なんでその2つを買うん?なんかあったん?」
ヒーリングXは魔力を即座に回復させる治療薬、ファインダマジックは攻撃魔法を回避する結界魔法薬。
この2つを買って行く人は冒険者やハンターが多い。
それをシンシアが買うのはおかしいとサエは思った。
「あぁそれはね、護身用に買っといた方がいいって聞いたから一応ね。」
「護身用?」
「ほら、今は物騒でしょう?
セントレードでも人が消える事件があったし…次はエデンなんじゃないかって、みんな噂してるの。」
「まっさかぁ〜!!心配せんでも大丈夫やって。」
「だけどね、エデンで変な事が起こってるのは確かなのよ。
国の偉い方々が優秀な魔導師たちを訪問してまわってるし。
カズヒルム君の所にも来たんじゃないかしら?」
「ううん、来てないよ!!」
「そう?あ、もう行かなきゃ。じゃあねサエちゃん。」
シンシアが帰ってからサエは考えていた。
「あ!そういえば…。」
最近よく役人さんがカズヒルムを訪ねて来る。
だがカズヒルムが調合中や実験中に訪ねてくるので、いつもサエは勝手に追い返していた。
もしやあの役人さんはその用件で何回も訪ねて来ていたのでは…と思うと、サエは焦りを感じた。
「う〜ん…でも調合中とか実験中のお兄ちゃんを邪魔したら怖いしなぁ…。
そうや、都合悪かってんからしゃあないよな!」
都合のいいように考えて、またぼーっとお客さんを待つ。
時計を見るともうお昼だ。
さすがに朝から何も食べていないと…
「お腹すいたなぁ…」
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