Sae's Bible
ガルガロック坑道


「………坑道…すごい…」

「本当にリホソルトは見るもの全てが初めてなのね。聞きたい事があれば私かナーナリアに遠慮なく聞いて頂戴ね。」

リホソルトは初めて見る物に目をキラキラさせながら、コクコクと頷く。

「なあなあ。ここ、ほんまに坑道なん?」

「はい、現在地はガルガロック坑道9の6Bです。」

サエ達はガルガロック鉱山の地下にある坑道へ足を踏み入れたのだが、サエのイメージしていた坑道と大幅に違う事が不満らしい。

「坑道ってもっと洞窟みたいな感じで薄暗くって、冒険みたいにこう…ワクワクするもんじゃないの?」

「アポニテの言うとおりだー、明るくてちっとも面白くないんだべー。」

坑道の中は光の魔法石で常に明るく照らされていて、左右に掘られた幾多の坑道の前には場所を示した看板まである。まるで博物館のように綺麗なのだ。

「仕方ねぇんだよ。ここは鉱石を掘る為に沢山の坑道がどんどん繋がって…あー、なんだっけナーナリア?」

「全ての坑道へ行けるように、坑道を間違えない為に一本の明るい道が作られました。それが今歩いているガルガロック坑道9の6Bです。」

「ねえナーナリア、此処はこんなにも整備されているのに何故廃坑になったのかしら。」

「それは採掘できる価値のある鉱石が出なくなったからですよ。」

「…にしては綺麗すぎやしないか?廃坑したのはもう何年も前だぞ?」

そう。いくら歩いても魔法石が切れている箇所は無いし、蜘蛛の巣一つ無い。それどころかピカピカに磨かれている。

「どっかの国が軍事利用してたんじゃないっすか?」

「あー、それは有り得るな。アキルノアって意外と勘が良いんだな、アポニテに比べて。」

キムーアが珍しくアキルノアを褒めたのでアキルノアは直ぐに天狗になって胸を張る。

「私だって勘ええもん!アキルノアより料理も上手いし!」

「それはいえるわね。」

「何言ってんすか!蕎麦なら負けませんよぉおおおっ!!」

「「負けてる負けてる。」」

恐怖の蕎麦を食べた経験者達は全力で否定する。

「そば…?何それ…おいしいの…?」

「ごっさ美味かとよ!!!!食うかグフゥウウウッ!!!」

テンションの上がったアキルノアの鳩尾にジュリーの鉄拳が入り、アキルノアはバタンと倒れた。

「あらやだ、どうしましょう。アキルノアが気絶してしまったわ。キムーアの手を借りるのは悪いから放置していきましょうか。」

「ジュリー…さすがに放置はちょっと…」

「しゃあねえな。私が担ぐか…って、え?」

「……ん…これで楽だね。」

リホソルトがヒョイと指を上下させると気絶したアキルノアが浮かび上がった。しかも自動で後ろをふよふよとついて来るので、なんだか不気味だ。

「後ろからアキルノアが浮いてくるとか!!!なんか怖いねんけど!!」

「いや、あれはあれで面白いですよ。ありがとうございましたリホソルトさん。」

「ううん…これくらい大丈夫。よく浮かしてたから。」

「よく浮かしてたって…「おい、気をつけろ。」

サエの言葉をキムーアがいつもより低く小さい声で遮る。

「なんやどないしたん?」

「サエ、声を落として。後をつけられているの。」

ジュリーがさりげなくサエの耳元に口を寄せ、状況を告げる。

「人数はわかるかナーナリア?」

「……おそらく…二人、でしょうか。」

「瞬間移動、させてみる?」

リホソルトの瞬間移動は半径300メートルにある物や人にしか有効でない。キムーアの勘では後ろにいる奴らと自分達の距離は100メートルちょい。

「そうだな…私達の前に瞬間移動させて空中に留める事は出来るか?」

「どのあたり?」

「…『8の2G』と書いてある坑道の前で頼む。」

リホソルトが頷いたのを見て、キムーアはニヤリと怪しげな笑みを浮かべ、全員に下がっているように伝えた。

「…3.2.1でやるよ。」

3.2.1.

ヒュンッと二人の男がサエ達の前に現れ、空中に留まる。
キムーアはそこを逃さず瞬時に距離を捉え、軽くジャンプする。

「えっ!!?」
「は!!?ちょ、」

「「ウワァアアアアアッ!!!!!!!!!!」」

キムーアが男達の後頭部を掴んだまま勢いが良すぎる程に着地する。勿論、男達は顔面からの着地になったが。

「おい、何が目的か吐け。」

一人の男を左足で踏み付け、もう一方の男の胸倉を乱暴に掴み嘲笑するキムーアは鬼畜としか言いようがなかった。

「…そこのエルフ達を国へ連れていく為だ。」

胸倉を掴まれた眼鏡の男は静かに答えた。

「まさか…貴方達…カーバンクル…!?」

「ゲホッ!ああ、そうだぜ。カーバンクル小隊のもんだ。」


[次へ#]

1/11ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!